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映画を作る専門学校で先生をやってます。今期は始まったばかり。どんな人間を主人公に映画を撮りたいか、生徒たちに発表してもらいました。
すると…「失語症の男の恋」「対人恐怖症の男が一人あそびをする」「自殺志願者が…」…何だか病気のオンパレード。いいんだけど…もっと普通の人間にも興味をもてないもんかなあ。そこで生徒たちに最近何か面白かったことがなかったか訊いてみました。
みんな「えー」と言いながら告白を始めました。
「浮気がバレた私。反撃しようと彼氏の浮気も突き止める。謝る彼氏に“付き合ってあげるけど浮気は続ける”と宣言する」
「僕のカッコいい机を勝手に使う父。事業を失敗した彼には金を貸している。今日も父は僕の机で競馬新聞を熟読。部屋に入ると父はコソコソと背を向ける。情けない父に胸が痛む」
「プチ右翼の彼氏がアジア人の給仕をバカにする。怒る私。だけど自分が在日であることは言えない」
「50代でニートの叔父が同居している。彼の存在を許している祖母。出てって欲しい母…」
ね! 病気のオンパレードよりよっぽど面白いでしょう。人間がいる気配がきちんとする。いいなあ。
異常な設定ばかり考えるのをやめて。ちょっと自分のまわりを見回せばこんなに面白い人間がいるのに。そんな風にぶつぶつ言ったんですが生徒たちはイマイチ反応が鈍い。うーん。やっぱりみんな面白い話をやりたいんだねえ。無理もない。“映画が好きだ。作りたい”なんて人はやっぱり日常が嫌いなわけでしょう。そんな人たちに「まわりをよく見よう。現実をまずは肯定しよう」なんて言っても伝わらないか…。
確かに俺も、人生で初めて撮った映画はゾンビ映画でした。高3の夏休みに友達の家に泊まり込んで。水彩絵の具で体中を緑色に塗って。銭湯にそのまま行って番台のおばちゃんに怒鳴られたりしたっけ…。ただ緑色になってウーウー言いながら歩き回るだけの映画を爆笑しながら撮ってたもんなあ…。
だから「映画=面白い話。日常とは関係ない話」なんてふうに考えがちなのはわかりますが…。でもやっぱりどうにも浅くて物足りないので。だから生徒たちにはもうちょっとこういう話してみるつもりです。人間らしい主人公を見っけてくれと。地味なのもいいよと。
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そんなこんなで夜間の学校を終え夜中に帰宅すると、妻の弟Y君が遊びに来ていました。彼はウチの息子にメロメロなんでたっぷり抱いてもらいます。でもって彼の新しい恋の話を聞いたりして。人間らしい夜が過ぎて行きました。
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■過去の記事
第10回:「ホームレス中学生」取材と長澤まさみ
第9回:「ホームレス中学生」ふたたび音作業に入る
第8回:息子が一ヶ月、吉祥寺の写真屋で記念写真
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[古厩監督のなんとかかんとく日記]
「奈緒子」「ホームレス中学生」の映画監督・古厩智之監督がおくる連載コーナー。(毎週木曜日更新)
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 映画監督:古厩智之
1968年長野県生まれ。大学在学中に撮った短編映画「灼熱のドッジボール」で92年ぴあフィルムフェスティバル・グランプリを受賞。94年に同賞スカラシップで初の長編「この窓は君のもの」を監督。「まぶだち」(01)でロッテルダム映画祭グランプリを受賞。他に「ロボコン」(03)、「さよならみどりちゃん」(05)、「奈緒子」(08)など。新作は、小池徹平主演「ホームレス中学生」。 |
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