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| “譜めくり”というアイディアが先にあったわけではなく、最初はただ、二人の女性の強い結びつきを描きたかったのです
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| 現役ピアニストと、幼い頃にピアニストになる夢を絶たれた譜めくりの女性の愛憎を描いたサスペンス「譜めくりの女」。この作品のメガホンをとったのは、ヴィオラ奏者であり国立音楽院の教授でもあるというフランス映画界でも稀な経歴を持つドゥニ・デルクール監督。今年3月、フランス映画祭に合わせて来日した監督にインタビューした。
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[ドゥニ・デルクール監督] 1964年、パリ生まれ。パリ第十大学にて哲学を修め、名門パリ政治学院を卒業。一方、高い評価を受けるヴィオラ奏者として、1993年よりフランス・シンフォニック・オーケストラにてアルト・ソロとして活動し、パリ国立音楽院時代には、プレイエル、カーネギーといった世界一流の舞台でソロ演奏も行った。現在は、映画監督として、またストラスブール国立音楽院教授として活動を続ける、フランス映画界でも類を見ない才能の持ち主である。幼い頃に手にしたスーパー8に興味を持ち、やがて短編を撮り始める。兄のトムと製作会社LES FILMS A UN DOLLARを設立。
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「譜めくりの女」
配給:カフェグルーヴ+トルネードフィルム
4月19日、シネスイッチ銀座、渋谷シネ・アミューズにてロードショー
オフィシャルサイト |
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| この映画を撮ろうと思われたきっかけを教えてください。
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| “譜めくり”というアイディアが先にあったわけではなく、最初はただ、二人の女性の強い結びつきを描きたかったのです。私自身が音楽界に身を置いているので、“譜めくりの女性”という物語が浮かびました。ストーリーを考えていく過程で、そこに復讐劇の要素が入ったらいいのではと思ったんです。譜めくりというアイディアがとても斬新に受け取られるのですが、私にとっては譜めくりというのは日常的な存在で、それほど珍しいものではないんですよ。
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| シナリオを書いたのは随分前なので今では記憶もおぼろになっていますが、撮影中に心がけていたのは、女性を撮っているのが男性の私なので、男性から見た女性の紋切り型のイメージに惑わされないようにしました。それと、サスペンス映画なので、主人公のメラニーをあまりにも“人の心を操ろうとしている人物”として描いてしまうと面白くない結果になってしまいそうだったので、“偶然そういう結果になったのか?”と思わせるような撮り方をしました。それがサスペンスの極意だと思いますね。
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| 監督ご自身も音楽家として活動されていますが、譜めくりをした経験はありますか?
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| 私自身は誰かに譜めくりをしてもらった事はないのですが、譜めくりをした経験はあります。私の先生の演奏会だったのですが、あまりに早くページをめくりすぎたために迷惑をかけてしまって、それが今でもトラウマとして残っています。でも、演奏家というものは演奏に集中しているので、譜めくりに左右される事はあまりないんです。この映画は、あくまでフィクションだと思ってください。
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| 女性の怖さ、陰湿さを見事に描いていると思いました。監督はああいった女性の心理をどこで観察したのですか?
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| どんな男性でも“女性”性を持ち、どんな女性でも“男性”性を持っていると思いますが、今回は私の中にある女性性を引き出して撮りました。この映画は冷酷で陰湿な部分もありますが、実際の私は明るくて親切な人間ですよ(笑)。私が思うに、脚本を書いたり映画を撮ったりするのは実生活とは反対の要素が出るものだと思うのです。心温まる映画を撮る人は、逆に冷酷だったりするかもしれませんね(笑)。
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| 主演のカトリーヌ・フロとデボラ・フランソワをキャスティングした理由をお聞かせください。
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まずアリアーヌ役のカトリーヌを先に選んだのですが、彼女はコメディを得意にしている女優で、フランスではとても人気があります。最初のシーンで、メラニーの演奏中なのにアリアーヌがファンにサインをする場面で観客が「あんなことしなければいいのに…」と思うような場面がありますが、そんな役をみんなから愛されている女優が演じれば、「この人は実際は意地悪な人間ではないんだな」と思いますよね。そんな効果を狙って、好感度の高い彼女を選んだのです。喜劇に優れている役者というのは悲劇をやらせたら天下一品ですからね。
メラニー役のデボラはプロデューサーの推薦だったのですが、最初はどうかな?と思っていましたが、テストをしたらとても良かったので彼女に決めました。彼女のおかげでこの映画は成功したとも言えます。
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| 撮影中のお二人はどのような関係を築いていたのですか?
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| 撮影中の二人はそんなに親しい関係を結んではいなかったように思います。面白いことに役者というものは役を引きずるものなのですね。彼女たちが最初に親しげに話しているのを見たのは、メラニーがアリアーヌから譜めくりになってくれないか頼まれるシーンを撮影した後からですね。
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| 成功しすべてを手に入れたものの心が弱くなっているアリアーヌと、夢を奪われたがゆえに冷徹な人間となったメラニー。二人の関係はある意味で逆説的ともとれますが、それについてはどのように思われますか?
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| 二人は言ってみれば“持つ者”と“持たざる者”ですが、結局弱いのはどちらかと言うとアリアーヌの方ですね。最後にはメラニーが凌駕して、アリアーヌはすべてを最後に失ってしまうわけだけれど、観た人は果たしてメラニーが勝者なのか?と思うはずです。アメリカ映画は白黒つけたがりますが、この映画は私たちを取り巻く“日常”を描いているので、善悪や白黒は、はっきりしていないのです。良い所も悪い所も、強い所も弱い所も、両方持っているのが人間だと思うからです。
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| お気に入りを挙げるのはとても難しいですが、アルフレッド・ヒッチコックの作品は全部好きです。それとキューブリック。日本では中田秀夫監督の作品が好きです。詩情をたたえた映像美のある作品が好きなんです。
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| 最後に、これからこの映画を観る人へのメッセージをお願いします。
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| 監督:この映画を見て、人間の心の中に隠された強い感情が存在しているということを知って欲しいです。この作品は美的に洗練された表現形式を使っているので、目でも楽しめると思います。そしてもう一つ、“子どもの頃に受けた心の傷は決して癒えることはない”ということも知って欲しいですね。
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陽気でサービス精神旺盛な監督のおかげで、時間がきても写真を撮りながら質問が続いたインタビュー。この作品をこんなに明るい人が撮ったんだと、そのギャップにひたすら驚かされました。ポスターの横でポーズをとる監督はとっても素敵な笑顔なんですけど……「譜めくりの女」、めちゃくちゃ怖いです。ぜひ劇場でご覧あれ。
(取材・文・写真:山内真理子)
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