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「どこに行くの?」柏原収史インタビュー
「どこに行くの?」柏原収史インタビュー
一番印象に残っているのは、監督が過激なシーンになると生き生きしていたことでしょうか(笑)
80年代インディーズ映画の極北「追悼のざわめき」(86)から22年。あの松井良彦監督がついに沈黙を破り描くのは、究極の恋−。デビュー作「錆びた空缶」(79)以来、一貫して疎外されている人間を描いてきた松井監督が今回選んだのは同性愛。その作品で、主人公のアキラという難役を演じきった柏原さんが、作品に対する思いや松井組の現場などをたっぷり語ってくれた。
profile
[柏原収史]
1978年、山梨県出身。94年役者デビュー。「スリ」(00年/黒木和雄監督)で日本映画批評家大賞・新人賞を受賞。「カミュなんて知らない」(06年/柳町光男監督)はカンヌ国際映画祭、ニューヨーク映画祭などに出品され、東京国際映画祭では“日本映画・ある視点部門”にて作品賞を受賞。その後も話題作への出演が続き、注目の実力派若手俳優として活躍中。その他の主な出演作に「きょうのできごと」(04)、「出口のない海」(06)など。
「どこに行くの?」
配給:バイオタイド
3月1日よりユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開
オフィシャルサイト
出演のきっかけを教えてください。
昨年の3月に、松井監督からオファーを頂いたんです。

――監督から直接って、すごいですね。

ですよね(笑)。それで監督に「どの作品を観て僕に決められたんですか?」ってお聞きしたら、「観たことない」っておっしゃるんですよ。「TV観ないし」って(笑)。何人か候補の俳優のプロフィールを並べて、「この人」って直感で選んでくださったそうですが、どうやら目が決め手だったようです。このアキラという役は心に傷を負った陰の部分と、狂気の部分を出さなくてはならず、写真の僕の目にはその両方が共存していたそうで…(笑)。僕の起用が決まった後、出演作を見てくださったそうです。
松井監督が22年前に発表した前作「追悼のざわめき」は賛否両論の嵐を巻き起こした伝説的な映画ですが、そんな監督の作品に出演するにあたって不安やためらいはありませんでしたか?
それが、それまで「追悼のざわめき」を観たことがなかったんですよ。なので、衝撃作と言われているのは知っていましたが、そこまでとは思っていなかったんです。お話を頂いて台本を読み、すぐに「是非やらせてください」とお返事してから初めて監督にフィルムをお借りしてうちで観たんですけど、もう絶句しましたね(笑)。ここまでとは…って。でもこんな物凄い世界観を作る監督の作品に出演できるということで、逆に撮影がもっと楽しみになりました。
柏原さんが演じたアキラは、幼い頃から受けてきた性的虐待がトラウマとなっている難しい役柄ですが、どのように役作りをしていったのですか?
今回、役作りに関しては松井監督にすごく先導していただきました。アキラの生い立ちを自分なりに考えて紙に書いてきてとか、衣装が決まったら、撮影が始まるまで毎日着て馴れておいてとか、監督の手ほどきはアキラという人間を形づくって行く上でとても助けとなりました。そういう役作りの仕方はこれまであまりなかったので、とても良い勉強になりましたね。
松井監督はどのような方なんですか?
一言ではとても言い表せませんが、普段はいつもにこにこしていらっしゃって、柔らかい方ですよ。京都弁ですし。でも映画に対する情熱には物凄いものを感じました。監督ご自身がおっしゃっていたんですが、「今はもう『追悼のざわめき』は撮れない。22年前の若い自分だったからこそ撮れた映画で、逆に当時は今回のような作品を撮ろうとも思わなかっただろう。22年の歳月を経て、色んな経験をして、人間的にもちょっとは丸くなった今、こういう可愛らしいラブストーリーが撮れるようになった」って。そんな方です(笑)。
「追悼のざわめき」では主演を務め、松井監督作品には欠かせない佐野和宏さんが、今回アキラに付きまとう刑事役で出演なさっていますが、佐野さんとの共演はいかがでしたか。
佐野さんにはすごく良くしていただきましたね。とてもベテランの方だし、見て盗むところは多かったです。一見怖そうですがすごく優しい方です(笑)。芝居論や役の構築の仕方などいっぱいお話してくださって、本当に勉強になりました。できあがりは何回も観ていますが、佐野さんが画面に出てくる度に「さすがだなぁ」って思わず唸ってしまいます。
撮影中のエピソードなども多そうですが、いかがでしたか?
色々おもしろい裏話はありましたが、一番印象に残っているのはやっぱり監督が過激なシーンになると生き生きしていたことでしょうか(笑)。殺すシーンや燃やすシーン等になるともうスイッチポン!みたいな(笑)。映画では同じシーンをアングルを変えて何回か撮影するんですが、そういうシーンへのこだわりは凄かったですね(笑)。監督の嬉々とした姿を目の前にして、「やっぱり『追悼のざわめき』を生んだ方だなぁ」としみじみ思いました。
個人的に違う結末を想像していたのであの最後はびっくりしたんですが、もしかして最初は違う終わり方だったとか…?
そうなんですよ。準備稿の段階では別パターンの結末だったんです。でも決定稿をもらったとき監督が「結末変えたから」っておっしゃって、読んだら今のような終わり方にがらっと変わっていました。監督から感想を聞かれたので、正直に「前のが好きでした」って言ったんですけど、でもその時監督が、アキラと香里のように暗い共犯関係から生まれた愛報われないものなんだっておっしゃっていたんです。監督の確固たる信念あってのこの結末なので、今は僕の中でもこの終わり方で良かったなあと思っています。
柏原さんはこの作品をどのようにとらえていらっしゃいますか?
監督のように「かわいらしいラブストーリー」とは言えないですけど(笑)、僕が今までやってきた作品の中ではとびぬけて過激でハードな作品であることは間違いないですね。でも同時に柔らかくハートフルな部分もあり、とてもいい作品に出会えたと思っています。早く皆さんの感想を聞きたいですね。
今後も映画を中心に活動をされるのでしょうか?
08年は公開予定の映画が3〜4本あります。特に映画に固執しているわけじゃないんですが、映画のお話を頂くことがが多いんですよ。でも昨年秋に、初めて舞台に挑戦しました。初めてなのにシェイクスピア、しかもイギリスから有名な女性演出家がいらっしゃって、通訳を介してやるという大変な舞台デビューでしたね(笑)。

――最初の舞台でそれはきついですね…

でもチャレンジするなら一番ハードな現場に飛び込んでみようって思ったんです。最初に過酷な現場を体験しておけば、次からは少しはやりやすくなるんじゃないか、って。確かに苦労しましたがとても楽しかったので、結果的にやって良かったと思うし、本当に良い経験でした!でも今のところ今年は舞台の予定はないです(笑)。
では最後にファンの皆さんに一言お願いします。
松井監督のファンの方には「追悼のざわめき」以来待望の新作ですし、僕の作品を観てきてくださった方には今までにない柏原収史を観てもらえると思います。過激なシーンもありますが、ぜひ沢山の方に観ていただきたいです。
編集部の呟き
柏原さんとは同郷で、学年の違う私も知っているほど地元では有名なご兄弟(お兄さんは同じく俳優の柏原崇さん)なのですが、実は共通の友人がいたり、なんと誕生日が一緒なことが途中で発覚したり、取材後は地元ネタで異様な盛り上がりをみせたのでした。本当に楽しいインタビューをありがとうございました。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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