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インタビュー
「いつか眠りにつく前に」ラホス・コルタイ監督 インタビュー
「いつか眠りにつく前に」ラホス・コルタイ監督 インタビュー
ハリウッドでこういう人間ばかりの映画を作ることは珍しいと思いました
ヴァネッサ・レッドグレーブ、メリル・ストリープ、クレア・デインズ、トニ・コレットら実力派俳優が集結した感動作『いつか眠りにつく前に』。スーザン・マイノットのベストセラー小説をピュリッツアー賞作家マイケル・カニンガムがマイノットと共同で脚色した本作でメガホンを取ったのは、これまでジュゼッペ・トルナトーレ監督やイシュタヴァン・サボー監督ら映画界の大御所と撮影監督として長年仕事をしてきたラホス・コルタイ監督。本作のプロモーションのために初来日した監督に映画に込めた想いを聞いた。
profile
[ラホス・コルタイ監督]
1946年4月2日ハンガリー、ブダペスト生まれ。当初は撮影監督、現在は監督として、国際的に注目を集める映画製作者である。ブダペストの演劇・映画アカデミーで学ぶ。カメラマンとして脚光を浴びたのは、同じくハンガリー出身の監督イシュトヴァン・サボー監督との四半世紀にわたるコラボレーションによる。アカデミー賞外国語映画賞ノミネートとなった「コンフィデンス/信頼」(80)、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「メフィスト」(81)、アカデミー賞外国語映画賞ノミネートとなった“Colonel Redl”(85)と「ハヌッセン」(88)、グレン・クローズが主演した「ミーティング・ヴィーナス」(91)、ジニー賞最優秀作品賞を受賞した「太陽の雫」(99)、アネット・ベニングがゴールデングローブ賞を受賞した「華麗なる恋の舞台で」(04)、そして最新作の“Rokonok"(06)などがある。
「いつか眠りにつく前に」
2月23日(土)日比谷みゆき座ほか全国ロードショー
配給:ショウゲート
オフィシャルサイト
ヴァネッサ・レッドグレーヴの演技に圧倒されました。イギリス出身の彼女をアメリカ人の役として起用された理由をお聞かせください。
もちろん彼女はイギリス生まれかもしれませんが、その前に偉大な大女優だと思います。ですので、起用するときに彼女がイギリス人であるということは一切考えませんでした。死の床にある主人公アンのシーンの脚本を読みながら、誰がこの老婦人を演じられるかと考えていたのですが、ヴァネッサ・レッドグレーヴの顔しか浮かびませんでした。彼女の演技は本当に素晴らしかったです。シーンのほとんどがベッドで寝ているシーンであるにもかかわらず、目と顔の表情で真に迫る演技を見せてくれました。
脚本を読んだときの最初の印象は?
とても詩的だと思いました。過去のよき時を思う、日々の決断、人生の不安、すごく人間的な映画になると思ったというか。ハリウッド映画でこういう人間ばかりの映画を作るのは珍しいと思いましたね。

――それぞれのキャラクターへのアプローチはどのようにされたのですか?

この映画がうまくいった要因は、出演してくれた俳優たちが私を信頼して演技をしてくれたからです。キャスティングは名前で選ぶのではなく、あくまで脚本を読んで私が思い描いた俳優に出てもらうことが重要でした。まるでドキュメンタリーのように、イメージ通りの人にいてもらう必要がありました。スタジオのバックアップもかなりありましたが、その場にいるだけで母となり娘となることのできる人を集めることに苦心して、それが実現できたからこの映画がうまくいったと思っています。
美しいシーンがたくさんある素晴らしい映画でした。監督ご自身にとって一番印象的なシーンを挙げてください。
一番印象的なのは冒頭のシーンです。というのも、あのシーンは最も撮影に苦労したところでもあるからです。この映画の言語を説明する大切なシーンでしたし、マイケル・カニンガムの脚本にはイメージしか書いてありませんでしたから、それを実際にどのように映像にするかという点で難しかったのです。コンピューター・グラフィックを使おうという提案を受けたこともあったのですが、私はそれはしたくありませんでした。これまでに関わってきた作品でもそうですが、私はできることなら全てをCGIにするのは避けたい主義です。冒頭のシーンは少しコンピューターで付け足した部分もありますが、何度も試行錯誤を繰り返し、夜中の2時頃にちょうどいい色の空を撮ることができました。

二番目に好きなのは、バディとアンが家の中をダンスするシーンです。まるでオペラのフィナーレのように、若い二人が愛と自由を謳歌しているシーンで、長くカメラを回しました。

三番目は、数十年ぶりに再会したヴァネッサとメリル(・ストリープ)がベッドに横たわって過ごすシーンです。この映画を公開できなくても、あのシーンだけは皆さんにお見せしたいと思うくらい、映画史に残る特別なシーンになったと思います。
「いつか眠りにつく前に」ラホス・コルタイ監督 インタビュー
若きアンの鮮やかな色彩と死の床に就くアンの部屋の暗さの対比が印象的でした。色彩についてはどのように取り組まれたのでしょうか。
もちろん、色彩というのは映画を作る上で非常に重要な要素なので、今回も撮影に入る前にどのシーンをどのような色調にするかについては細かく決めました。普通なら過去を語るときに白黒にして、現在を鮮やかなカラーにすると思いますが、今回はあえてその逆に設定しました。それは、彼女の記憶を自由に行ったり来たりする映画にしたいと思ったのと、ロケを行ったニューイングランドの自然がとても美しかったので、その色をそのまま活かしたいと思ったからです。アンの忘れられない3日間の思い出がビビッドに描かれるようにああいった色調を選びました。
映画の中で主人公のアンは何度か歌を歌いますが、その歌い方がそれぞれに違っていたのが印象的でした。
その通りです。よく映画をご覧になっていますね。アンを演じたクレア・デインズはこれまで映画で歌ったことはなかったそうですが、コーチについて練習してもらいました。アンの歌い方の違いについてですが、歌のレコーディングがあったときにクレアから「どういう気持ちで歌えばいいのか指示して欲しい」と言われて、気持ちによって歌い方が全く違うんだということに気づかされました。最初にアンが歌うのはライラの結婚式ですが、やはり親友の結婚式で歌うわけですから、歌い方も“大切な人に何かをプレゼントする気持ち”です。バーで歌うシーンは、仕事ですから“早く家に帰りたい”という気持ちでしょうし、三度目は生活に疲れて全てが上手くいかない時期に子供たちに子守唄を歌うシーンですが、あのシーンはクレアが自分が子供のときにお母さんが歌ってくれたという子守唄を披露してくれたのです。
マイケル・カニンガムによる脚本を映像化するにあたって気をつけたのはどんな点ですか?
私自身、脚本を読んですぐに気に入りましたし、構造としては変えるところが一つもない完璧な脚本でした。といっても映画としてあまりにも複雑になってしまいそうだったのでカットしたシーンはあって、アンの夫が出てくるシーンと、アンとハリスがタクシーに乗るシーンは編集段階でカットしました。本で読むにはページを戻ればいいことですが、映画はページを戻すわけにはいかないので。
編集部の呟き
ヴァネッサ・レッドグレーブとメリル・ストリープの実の娘が登場するなど“実の母娘共演”も話題になっている「いつか眠りにつく前に」。とにかく演じる俳優が豪華極まりない顔ぶれで、それだけでも観に行く価値がある。映像、音楽、登場人物たちの言葉、そのどれもが美しく、「人生に過ちなんてない」というメッセージが深い余韻と共に伝わってくる秀作だ。
(取材・文・写真:山内真理子)
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