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インタビュー
『明るい瞳』ジェローム・ボネル監督 インタビュー
『明るい瞳』ジェローム・ボネル監督 インタビュー
役者の“視線”だけで、3ページのテクストよりも雄弁に語ることができる。私にとっては、それこそが興味深いことなんです
不器用で自分をうまく表現できないヒロインが、言葉の通じない地で優しい愛に触れ、変化する姿を描いた『明るい瞳』。本作のPRで今年5月に来日した新鋭ジェローム・ボネル監督にインタビューした。
profile
[ジェローム・ボネル監督]
1977年生まれ。パリ第3大学映画科卒業。在学中に長編脚本『Le Bonheur des uns』が最優秀ジュニア脚本賞の最終選考に残っている。99年に短編『Fidele』で監督デビューし、この作品から女優ナタリー・ブトゥフとのコラボレーションをスタート。2001年に『Le Chignon d'Olga』で長編デビューを飾る。この作品は、家族の年代記の中に愛や友情の物語を描き、最優秀ジュニア脚本賞にも選ばれた。02年にはシカゴ映画祭国際批評家連盟賞を受賞。長編第2作にあたる本作『明るい瞳』は、05年のジャン・ヴィゴ賞に輝き、ベルリン国際映画祭「フォーラム部門」に出品された。日本でも05年に横浜フランス映画祭に出品され、監督も来日している。07年3月には、長編第3作『J'attends quelqu'un(英題:Waiting for someone)』がフランスで公開され、賞賛を浴びている。
『明るい瞳』
配給:アステア
9月1日、シアター・イメージフォーラム他 全国順次ロードショー
オフィシャルサイト
本作で描きたかったことについてお聞かせください。
テーマはいくつかありますが、そのうちの一つは“孤独”です。主人公のファニーは病を抱えていますが、私はその病の部分よりも、彼女が抱えている“孤独”に興味があったのです。

“コミュニケーション”と“視線”も大きなテーマです。この映画は二部構成になっていて、前半は、同じ言葉を話しながらコミュニケーションがとれない人たちについて、後半は、言葉が不在であるにも関わらず本当に深い人間同士の交流が誕生する物語を描いています。

私にとって非常に興味深いのは、言葉はコミュニケーションの中でも嘘をつくための最大の道具になるということです。真実を伝える最大の道具は、“言葉”ではなく“身体”です。そういう意味で、コミュニケーションにおいて“視線”は非常に大切になってくるのです。若いファニーは自分のアイデンティティを探し求める旅に出るわけですが、彼女が最後に本当に美しくなるのは、オスカーの自分に対する新しい視線に気が付くからなんですね。
監督ご自身はどんなときに孤独を感じますか?
撮影現場で大勢のスタッフに囲まれている時でも孤独を感じますね。でも、それが嫌いではないんです。なんとなく孤独を楽しんでいる自分がいるんですね。撮影が終わって編集作業に入ると、私と編集者と2人きりになるので孤独も耐えがたいものになるのですが(笑)。私にとって孤独とは、恐怖の対象であると同時に、非常に求めているものでもあるのです。
ファニーとオスカーというキャラクターを描くにあたって気をつけたことは?
役者と一緒に役を創り上げていく行程はとてもミステリアスです。私は決して役者にシナリオに書いてある通りに演じて欲しいとは望みませんし、リハーサルもあまりしません。撮影前にシナリオの読み合わせや議論はしますが、むしろ、役者とのコミュニケーションを通じて生まれる連帯意識、仲間意識を重視しています。というのも、そういった会話の中で私自身の役の解釈を読み取ってもらえると思っていますし、役者の自発的な創意工夫が生まれると思うからです。
『明るい瞳』ジェローム・ボネル監督 インタビュー
ヒロインのファニーにご自身の断片を見つけるとすると?
ファニーと私の共通点として一つ挙げられるのは、非常に羞恥心が強いということです。役者の“視線”だけで、3ページのテクストよりも雄弁に語ることができる。私にとっては、それこそがとても興味深いことなんです。
静謐な映像にシューマンの曲が非常に印象的に使われていました。
実は本作にはシューマンの曲を3曲使っているんです。私はどちらかというとクラシック音楽、それもピアノ・ソロを選ぶことが多いのですが、脚本を書いているときに自分が知っているシューマンのピアノ・ソロの中で一番ふさわしいと思ったものを選びました。オープニングで流れる曲は、私が子供の頃によくピアノで弾いていた曲です。

Q:その他の音の使い方で気をつけたことは?

本作の音の使い方には非常に思い入れがあります。というのも、映像で感動を呼び起こすのは簡単なことですが、音で観客を感動させるのはかなり難しいからです。私は映画音楽というものがあまり好きではないので、この映画では音楽ではなく、鳥のさえずりや人間の呼吸、肌の触れ合う音といった日常の音を大切にしたかったのです。今回はまるで同録(※撮影と同時に音を収録すること)のように録られていますが、実は全てポスト・プロダクションで、凝りに凝って創った自然音なんです。本作は無声映画を彷彿とさせるという指摘も受けましたが、台詞はなくとも、非常に存在感のある“音”があると思っています。
最後に日本の観客へメッセージをお願いします。
私は日本文化が大好きで、素晴らしいと思っています。この映画を観たくなるような言葉を言うのは映画監督の仕事ではないと思いますが、日本の皆さんがこの作品を気に入ってくださったら本当に嬉しいです。
編集部の呟き
長編第二作となる本作で、フランスの映画賞で新人賞にあたる「ジャン・ヴィゴ賞」を受賞したボネル監督。その素顔はシャイで礼儀正しく、とても謙虚。最後にメッセージをとお願いすると、「日本の皆さんにメッセージを送るなんて恐縮です」とのコメントが返ってきたほどだ。ちなみに、俳優としても十分通用しそうな素敵なルックスなので、俳優としての活動予定はないのかと伺ってみると、これまた恥ずかしそうに否定していたのが印象的だった。
(取材・文・写真:山内真理子)
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