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インタビュー
『アズールとアスマール』ミッシェル・オスロ監督
『アズールとアスマール』ミッシェル・オスロ監督 単独インタビュー
重いテーマであっても、私の目指すものはおとぎ話であって、観終わった後に「おもしろかった」と言ってもらえるアニメなのです
『キリクと魔女』で仏アニメーション界最大のヒットを記録した、ミッシェル・オスロ監督の最新作『アズールとアスマール』。アフリカで育ったオスロ監督が常にテーマとしている異文化の問題を、特有のエキゾチックな色彩美や、冷静でリズミカルな場面展開で表現。今回は来日したオスロ監督に、直接この作品に対する想いを伺うことが出来た。
profile
[ミッシェル・オスロ監督]
1943年、コート・ダジュール生まれ。ギニアで幼少時代、アンジェで青年期を過ごす。芸術を勉強した後、独学でアニメーションを学ぶ。1979年、プロとしての初短編作品『3人の発明家たち』でロンドンのBAFTA章を受賞。この映画以降、自ら全てのシナリオとイメージデザインを手掛ける。影絵を用いた『プリンス&プリンセス』など、今までに短編アニメやテレビアニメを多数制作し、セザール賞をはじめ数多くの賞を受賞している。
『アズールとアスマール』
配給:三鷹の森ジブリ美術館
7月21日(土)より渋谷シネマ・アンジェリカ他にて公開
オフィシャルサイト
今回なぜこのようなテーマで作品をつくろうと思いましたか?
映画を作るにあたって制作期間が6年くらい掛かるだろうというのはいつも分かっていることなので、その間ずっとモチベーションを保つことが出来る、自分にとってホットなテーマでなくてはならなかったんです。そのテーマというのが、この地球上で今これだけの人が憎しみ殺し合って、愛し合っていないということです。戦争をテーマにして描こうと考えたときもありましたが、アニメーションにするときに戦争というのはうまく描けない、わたしにはどうしてもそれが出来ないのです。非常に現代的なテーマで、昔からその国に住んでいた人とそこへ移民としてやって来た人との対立、この社会問題ですね。でもこのように重たいテーマを扱っていたとしても、私が一番得意とする表現方法は“おとぎ話で物語を語っていく”というスタイルなのです。それがお客さんにとって最終的には観終わって「楽しかった」と思えるような映画であり、また自分がつくっている時も、もちろん楽しいものであって欲しいと思っています。
監督は様々な国の文化や歴史を多くの作品で取り入れておられますが、今回はなぜ北アフリカ、そして中世イスラム界を舞台に選ばれたのでしょうか。
まずおとぎ話をつくっていく上で、中世の方が都合がいいんです。現代のものをつくってしまうと、中々こういう美しいものは描けないですからね。そして社会の問題なのですが、自分が住んでいるフランスの大半は北アフリカ出身なんです。自分に一番身近だった人が北アフリカの人なのでそれを舞台に取り入れようと思いました。更に、北アフリカに存在していたイスラム文明をこの話の中で付け加えることが出来たんです。イスラム文明というのは中世の時代に世界に芽を広げていて、すごく華やいでいた美しい時代がありましたからね。その部分を取り入れたかったのです。
本編でアラビア語の部分だけは、字幕や吹き替えを一切付けずにオリジナルの言語を残したとのことですが、それにはどういったこだわりがあるのですか?
映画の大きなテーマである、“移民の問題を観客に疑似体験してもらう”という狙いです。移民とはどういうことなのか。彼らの問題のひとつに、その移民した国の人たちの言葉を理解できないというのがありますよね。なのでそれを観客の皆さんにも体験してもらおうと思い、アラビア語のところには敢えて翻訳を介さなかったのです。もちろん分からない部分はあると思いますが、ドラマ性は失わないよう、ストーリーにちゃんとついていけるよう、作っているはずです。全てを説明しきらない中に、ひとつのその映画の良さを見出しているということですね。
アズールとアスマールがあんなにも必死になって求めた“ジンの妖精”が意味するものとは?
まず物語には目的がなくてはならないですよね。できれば、その二人の登場人物にとって同じゴールでなければならない。ここでは二人がライバルという設定でもありますし。 いろんな物語を観ますと、お姫様というのはいつも、勇敢な青年が助けに来るのを待っていて、その助けてくれた人と結婚しなければならない。それが可哀想な気がしまして、私は今回ちょっと違うタッチでエルフを登場させたわけなんです。だから今回、ジンの妖精は、“自分で選ぶ!”という意志を持ったお姫様であって欲しかった。で、他の小さなジンの妖精たちに指示をして色んな人を呼んできたり…。きっとアズールとアズマールの前にも色んな青年がそこへたどり着いたと思うのですが、彼らではなく二人を選んだというのは彼女の意思なのですね。でもやはりアズールとアスマールにもそれぞれ意見があるわけですから、最終的にはお互いがパートナーを選んだということになります。“女性が外に出られない”という象徴でシャムサバ姫やジンの妖精も描かれていますが、映画の最後ではそれらも開放されて自由になる、そのような意味合いも含まれています。
日本語吹き替え版は、監督のイメージと合っていましたか?
日本語吹き替え版は非常に良かったです!観終わったあと「これは間違いなく自分の映画だ。(自分のイメージが)変えられていなかった」と思えました。声の選択も良かったし、アラビア語への変化も自然に行われていました。子供たちの声も、嫌味なく子供らしさが出ていて素晴らしかったです。やはりシャムサバ姫は日本語版でも可愛らしくて、人気になりそうですね。 そしてなにより、日本語吹き替え版を高畑勲という偉大な芸術家に監督して頂けたことを、本当に嬉しく光栄に思います。
『アズールとアスマール』ミッシェル・オスロ監督 単独インタビュー
今回の来日でどこか行かれましたか?また、日本でお気に入りの場所はありますか?
今回は東京以外を移動することは出来なくて、せいぜい昨日近くの新宿を少し歩いたくらいです。いま本当に毎日忙しくて、日本に来る前もロンドン、モロッコに立ち寄って、また日本からロンドンに行きます。今はとにかくあわただしいビジネス旅行という感じですね(笑)。日本の街はあまり良く知らないのですが、訪れた中では京都が一番好きです。たいへん美しい街だと思いました。とても気に入ったので、ぐるぐる散歩したり、お寺でお昼寝したりもしました。私は小さい頃から日本の美術に触れてきたので、日本はとても興味深いです。
最後に、いま現代の私たちにとって“異文化を知る”というのはどういうことだと監督は考えられますか?
20〜21世紀の住民としての現代人は、インターネットなどによって身近に様々な文明を検索して知ることが出来ます。そういう時代において何かを本当に“新しく発見する”というよりは、地球上のひとりの市民として、色々な文明が自分を影響しているということを感じ取ることなのではないでしょうか。
編集部の呟き
世界を回ってお仕事されている、大忙しのオスロ監督。海を越えての旅が続いてとってもお疲れのはずなのに、私たちを温かく迎え、ひとつひとつの質問にじっと耳を傾けながら、とても丁寧に答えて下さいました。今回の来日では大好きな京都にも立ち寄ることが出来なかったと残念そうだったのですが…。監督!次回作を持ってまた日本に来て下さることを期待してますよ!!
(取材・文・写真:宮崎彩加)
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