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インタビュー
『バベル』菊地凛子インタビュー
『バベル』菊地凛子インタビュー
恐怖や怖さを捨てて誰かを愛そうよ、と思わせてくれる。素晴らしい、歴史に残る映画なんじゃないかなと思います
今年一番の注目作『バベル』で、聾唖の女子高生チエコを演じ、アカデミー助演女優賞にノミネートされた菊地凛子が、この作品に対する熱い思い、撮影秘話を語ってくれた。
profile
[菊地凛子]
1981年、神奈川県生まれ。映画デビュー作は、新藤兼人 監督の『生きたい』(99)。その後、映画やCMを中心にキャリアを重ね、熊切和嘉監督『空の穴』(01)のヒロイン役で注目を集める。また、浅野忠信監督の『トーリ』(04)では得意の乗馬も披露し、力強い演技を見せている。その他の主な出演作は、新藤兼人 監督の『三文役者』(00)、石井克人監督の『茶の味』(03)、『ナイスの森 The First Contact』(04 監督:ナイスの森/石井克人・伊志嶺 一・三木俊一郎)など。国際的な注目を集めている期待の女優である。
『バベル』
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
4月28日スカラ座他 全国東宝洋画系拡大ロードショー
オフィシャルサイト:http://babel.gyao.jp
他人に声が届かない。障害もあるチエコ。彼女に対して共感した部分は?
チエコは確かに強いセクシャリテをもっている子だけれど、セクシャリティ以上に、ケンジを求める求めるシーンに象徴されるように、誰かを求めることは誰にでもあることだと思うんです。母親の愛情、父親に対するリスペクト、先生、友達、恋人であったりいろいろですが、誰かを強く求めることは誰にでもある自然なことなんじゃないかな、と思います。
即興もあり、まわりの役者さんとも合わせながらの楽しい現場だったと聞きましたが?日本とハリウッドはやはり撮り方の違いは大きいのでしょうか?
確かにハリウッドの映画なんでしょうが、それよりもアレハンドロ監督の映画、という意識が強いですね。彼独特のやり方があって、キャストを家族として迎え入れてくれるんです。とても愛情深い人で。「一緒に良い映画をつくろうよ、パートナーとして」という空気がありますね。だから私は彼にどーんとぶつかっていきましたし、彼はそれを温かく受け止めてくれました。役者が「彼が思うイメージに近づきたい!」と強く思わせるマジックをもっていて、そのイメージに追いつきたい!と自分自身をどんどん追い詰めていってしまうんです。それに対して監督は「もっとこい、もっとこい!」みたいな感じで(笑)。強制はせずに、自然とそうしてしまうような環境づくりをしてくれる、うーん、本当にマジックをもっている人なんです。
「世界標準」と言える堂々とした菊地さん。外国の作品に出演することは以前から考えられていた?
メキシコの監督の映画にやるなんて夢にも思ってなかったですよ。そもそも日本で女優としてずっとやれるかどうかもわからなかったですし、不安でした。いつまでやれるのかな、この仕事って。危機感や恐怖感がありましたね。そんなときに、私がとってもリスペクトしてる監督が、日本で映画を撮る、かつ英語が必要ない、そんなチャンスない!と思いましたね。確かに16歳という役柄の難しさもありますし、監督が本当のろうあ者を求めていたことも理解できました。なので私がやれることをやるしかないし、きっと最初で最後の機会だから、もう飛び込んでいく感じでしたね。この役柄は壁がものすごく高かった し正直不安もありました。でも高ければ高いほど挑戦しがいがありますし、1年間のオーディションのプロセスの中で、どっちに転んでも意味があるんじゃないかと思いましたし、落ちてもいいという覚悟がありました。とても良い時期を過ごせたし、いろんなことを経験させてもらいました。
『バベル』菊地凛子インタビュー
チエコが検事を求めて裸になるシーン。抵抗はなかったですか?
ヌードに対しては抵抗はありませんでした。それだけ夢中だったし、集中してました。あのシーンで脱ぐ意味は絶対にあったと、それは観ていただければ分かるかと思います。あのシーンはチエコの全てが現れている、美しいシーンです。セクシャリティだけじゃない、動物的に“求める”方法のひとつとして、裸があったんだと思います。だからそんなシーンに抵抗があるといったら「何しに来たの?」ってことになりますよね。シナリオの魅力が上回ったとも言えます。 それに私は女の人の裸ってきれいだと思うんです。これまで多くの画家が描いてきているように。人間は一枚一枚服をまとうことで感覚がずれてったんじゃないかとも思いますね、言語と同じで。本質的な人間の美しさだと思います。女優として自分がもっている道具は使うしかなかった、そんな感じです。
モロッコ、アメリカ、メキシコ、他の国のパートのことは知って演技をされていましたか?また完成した映画をみてどう思いましたか?
脚本は日本の部分しか読んでいませんでした。他の国のパートのこともカンヌで観るまで知らなかったですし。完成した映画は、観た人それぞれが感じるところがある映画でした。許し、感謝、犠牲、その後の再生。人間が一回通ることを描いていると思います。普通の人間が一生を生きている中で、何かを請うたり求めたり、そういったことを描いていて、全く他人事ではない映画になっていますね。人間らしさ、もっと言えば動物らしさ。言語を越えて「もっとコミュニケートできるんじゃないか」という希望をもっている映画です。恐怖や怖さを捨てて誰かを愛そうよ、と思わせてくれる。素晴らしい、歴史に残る映画なんじゃないかなと思います。
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