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| 会って30秒で盲目であることを忘れるくらい、彼らの目はキラキラ輝いているんです
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| 『ブラインドサイト』という言葉は、読んで字の如く、盲人たちがチベット社会から「見えない存在」のように扱われているという意味が込められている。そんな子供たちに手を差し伸べたのが、自身も盲目のドイツ人教育者サブリエと、盲人として史上初めてエベレスト登頂に成功したアメリカ人登山者エリック。盲目の子供に、健常者の大人でも難しいヒマラヤ山脈を登山させることで見えてくるものとは何なのか。ベルリン映画祭を始め数々の観客賞を受賞した超大スケールの完全ドキュメンタリー映画のプロデューサーにお話を伺った。
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[シビル・ロブソン・オアー]
アメリカやパリのテレビ局でレポーターやキャスターとして活躍した後、パラマウント・ピクチャーズによる全国ネットの番組を立ち上げる。その後パートナーのハーヴィー・バーンハードと共にユニバーサル・スタジオとプロデューサー契約を結び、数本の映画作品を手掛けた。そして現在は、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の独立戦争を題材にしたドキュメンタリーのプロデューサーを務める。最新プロジェクトは、サブリエ・テンバーゲンの自伝『わが道はチベットに通ず−盲目のドイツ人女学生とラサの子供たち−』の映画化。
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『ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜』
配給:ファントム・フィルム
7月21日、シネマライズ、品川プリンスシネマ他全国公開
オフィシャルサイト |
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| ベルリン国際映画祭をはじめ様々な映画祭での受賞、本当におめでとうございます。 |
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ありがとうございます。
Q:各映画祭での受賞について、今の率直な感想をお聞かせください。
まず『ブラインドサイト』が賞を受賞することによって一番嬉しいのは、映画に出演している子供たちにスポットが当たるということと、チベットで盲目の人たちが受けている迫害などを知ってもらえること、そしてその中でサブリエとポールが「国境なき点字(発展国における視覚障害者のための支援団体盲学校の名前)」をつくることでどのような偉業を成し遂げているかを分かってもらえるきっかけになることです。
彼らは盲学校を運営するために本当に必死になって資金を集めているので、私も映画祭などで賞金をもらった場合にはその20%を学校に寄付したりしています。賞を取ることで「国境なき点字」の認知度が上がり、人々の意識が向上し、彼らにとってプラスになればと願っています。 |
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| 今回は“盲目の子供たちのヒマラヤ山脈登山”という重みのあるテーマでしたが、なぜこのようなテーマでドキュメントを撮ろうと思ったのか、そのきっかけを教えてください。
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まず私の夫とエリックがキリマンジャロで知り合い、私が映像作家であると知ったエリックから「こういう話があるんだけど…」と相談を持ちかけられました。偶然にも、私と夫もキリマンジャロで知り合い、エリックと奥さんもキリマンジャロで結婚式を挙げていたのを聞いて、運命的な繋がりを感じましたね。
その後サンタモニカのカフェで初めて彼から詳しく話を聞きました。エリックなりに、ひどい扱いを受けている子供たちを救うためにはどうしたらいいかと考え、「僕は教師でもないし、僕が得意とする登山を通じて子供たちを少しでも救うことができたら」と決意したようです。「僕がエベレストに一緒に登った登山隊を連れて子供たちに会いに行く」と彼から聞いたときは、これはすごいことだと思いました。
サブリエから「チベットでは盲目の子供たちは“悪魔”と呼ばれ迫害されている」という事実を聞き、心を打たれたことも確かです。映像作家として、これだけの話を聞いて映画にしないわけにはいかない!と思いましたね。
Q:そしてさっそく撮影に?
ただ中国で撮影することはすごく大変なことで、とても一筋縄ではいきませんでした。撮影許可を得るために何回も段階を踏まなくてはならず、一体どれくらい時間が掛かるか分からなかったのに、「あと一ヶ月で出発するよ!」とエリックは言うんです。一ヶ月の間にどんなに無理をしてでも行く価値はあると思ったので、頑張って撮影にこぎつけたのですが、まさかここまでスケールの大きな撮影になるとは予期していませんでした。
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| エリックとサブリエについてお伺いします。私はこの作品を観て「この人たちは目が見えない盲目にも関わらず、心身共に本当に強い人間なのだなぁ」という印象を受けたのですが、シビルさんはお二人に実際会ってみて、どのような印象を受けましたか?
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エリックに関しては、まず会って30秒で彼が盲人目であることを忘れるくらい目がキラキラ輝いているんです。そして数分後には、その鋭い集中力があったからこそこの人はエベレストの頂上に到達できたのだと、ひしひしと感じました。でもそんな鋭い存在感をもっているにも関わらず本当に優しくて打ち解けやすいので、自然を愛する真の登山家であることがすごく納得できました。盲人目でエベレストを登頂するという考えられないようなことを成し遂げているのに謙虚な姿勢を崩さないので、彼が「やろうよ!」と言い出したことに対しては、誰もが“彼のチームの一員になりたい”と思わせられるんですよね。あれだけ「子供たちを頂上に連れて行きたい!」と強く言っていたのに、最後にはちゃんとサブリエの気持ちを理解して紳士的に振舞えるところを見ると、人間としてとてもバランスが取れた人なのだと感心させられます。どうにか彼の持っている素晴らしさを映像にしたいと感じました。
一方、サブリエに初めて会ったのは盲学校を訪れたときでした。階段から降りてきた人がいまして、あまりにもスムーズな降り方だったので、「きっとここで働いている従業員の一人だろう」と思っていたらサブリエだったんです。私の前に軽やかに歩いてきてさっと手を出し「私がサブリエよ」なんて言うものだから、「え?あなた目が見えないん盲目じゃなかったの?」と思わず聞いてしまいました(笑)。それほど、初対面の人にさえ盲人と目を感じさせない、自信に満ちた表情をしていました。部屋の説明も細かくしてくれるほど想像力がとても豊かな人なので、独特の世界観をもっているんですね。その素晴らしい感覚で、その時々どういう雰囲気なのかを読み取れるので、エリックと同じく一緒に居ると彼女が盲人目だということをすっかり忘れそうになるんです。彼女の仕事に対する努力や情熱は、周りの人にインスピレーションを与える威力を持っていますね。
こうやって長い間盲目の人たちと過ごすと、相手が盲人目であることをつい忘れてしまいました。それくらい彼らは相手に“障害”を感じさせませんでした。だから私は、“障害”と言うのではなく、“性格的特徴”という言葉に変えた方がいいんじゃないかと思うんです。サブリエ自身もそのように言っていましたしね。
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| シビルさん自身も子供たちと一緒に山へ登られたんですよね?
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はい、もちろん登りましたよ!
Q:では、映像に写っているところ以外で、子供たちとの思い出に残るエピソードなどがあれば教えてください。
まず可愛いエピソードとしては、映画の中では静かな感じに見える小さなダチャンが実はすごいいたずらっ子なんです。テントの中でもしょっ中いたずらをしていたんですよ。エリックの嫌いなものをこっそりお皿に入れたりして、エリックから靴紐を隠されるという仕返しを受けていましたね。ダチャンのお陰で小さないたずら大会が始まっていました(笑)。
あとは、登山しながらみんなで歌っているシーンが映画の中でも何回か出てきますが、チベット人というのは元々すごく歌が好きなんです。キャンプの中でもご飯の後には一人づつ歌って披露したり…。標高が高くなるにつれ、息苦しくて歌うことも困難になっていくのですが、一生懸命みんなで歌っている姿が多く見られましたね。
それとカットされていた大事なところとして、実は3人の子供が下山した直後に5日間吹雪にみまわれて、テントから全員が一歩たりとも動けないときがあったんです。−40℃の中で調理用の火を囲んでみんなで身体を寄せ合い話している内に、やっとそこで本音をぶつけ合い、お互いのことを本当に知ることができました。サブリエとエリックの本当に真剣な半ばケンカのような討論もここで行われたものなんですよ。けれどこの話し合いがあったからこそ、全員が気持ちよく「盲目の頂上」に行くことが出来たんだと思います。これはとても大切なエピソードのひとつです。
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私が部屋に入った瞬間、満面の笑みで立ち上がりドアのところまで迎えてくださったシビルさん。女優さんじゃないの!?と思うくらいスタイルもよく、とても美しい方でびっくり。ひとつの質問に対してとても沢山のエピソードを熱く語ってくださる様子から、この映画に対する愛情と情熱がひしひしと伝わりました。そんなプロデューサーが手掛けた作品だけあって、本当に壮大なスケールのドキュメンタリーになっていたので、是非みなさんもご覧になってください!!
(取材・文・写真:宮崎彩加)
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