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インタビュー
『フランドル』ブリュノ・デモン監督、アドレイド・ルルー、サミュエル・ボワダン
『フランドル』ブリュノ・デモン監督、アドレイド・ルルー、サミュエル・ボワダン
私が興味があるのは、人間の内的な戦争です。我々の内側にある戦争、この作品の場合、ドメステルの内側にある戦争を描きたかったのです
人間の罪は許され、いつか癒されていくことはあるのだろうか…。06年カンヌ国際映画祭審査員グランプリを満場一致で受賞した衝撃の問題作「フランドル」。この作品で脚本・監督を務めたブリュノ・デュモン監督と、主演のアドレイド・ルルー、サミュエル・ボワダンが来日し、作品に対する思いを語ってくれた。
profile
[ブリュノ・デュモン監督]
1958年、フランス北部バイユール出身。哲学を学び、哲学教師、広告、TVと全く異なる分野の職を転々としながら、80年代終わり頃から産業映画、教育映画を撮り始める。脚本も務めた長編第一作目「ジーザスの日々」で97年カンヌ国際映画祭カメラドール特別賞を受賞。続く「ユマニテ」では、99年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演男優賞、主演女優賞の3冠に輝き、世界にその名を轟かせる。この「フランドル」も、06年カンヌ国際映画祭審査員グランプリを受賞している。
『フランドル』
配給:アルバトロス・フィルム
4月28日(土)よりユーロスペースほかにて公開
オフィシャルサイト:http://flandres-movie.com/
映画の中に出てくる戦場から非常に抽象的な感じを受けたのですが、監督は、どのようなイメージを基にこの戦場をつくりあげたのですか?
デュモン監督:まず、ハリウッド映画などによく見られるステレオタイプな戦争との対比として、また今日世界中のあちこちに存在するアメリカの戦争のイメージに対峙するものとして位置づけたいと思いました。戦争をもっとリアルで悲惨なものとして提示したかったのです。だから音も、効果音ではなく生の音を使っています。 それと、もし抽象的と観客が感じるなら、それは私が政治的な戦争に全く興味がないからでしょう。私が興味があるのは、人間の内的な戦争です。我々の内側にある戦争、この作品の場合、ドメステルの内側にある戦争を描きたかったのです。
キャストのお二人にお伺いします。今回の役は非常に難しかったと思いますが、撮影前に二人でコミュニケーションをとったり、リハーサルをしたりしたのですか?
ボワダン:そういったことは特にしませんでした。そもそも、そのための時間も無かったんです。

ルルー:そうですね。いくつかのシーンについてはリハーサルをしたものもありましたが、そういうことはむしろ稀でした。それは、私たちが台本をもらっていなかったというせいもあるかもしれません。
台本がなかったなら、仕上がりを観てびっくりされたのではないですか?
ボワダン:ええ、確かに驚きました。カットされていたシーンもあったので(笑)。

ルルー:でもそれは台本をもらっていなかったからというよりも、編集によるところが大きいかもしれません。
デュモン監督との仕事は、相当な精神力、体力が必要だったと思いますが、どうでしたか?
ボワダン:確かに非常に難しい撮影になるだろうとは予想していました。でもとても良い経験でしたし、また良い時間を過ごせたと思います。

デュモン監督:悪い時間もね(笑)。

ルルー:そうですね…時々、いじめられていると感じるくらい、つらい時もありました。私にとって、バルブという女性は難しい役でした。撮影前に描いていたバルブの人物像やデュモン監督に対する一定のイメージと実際のイメージが合致していなかったことも時にあって、それも戸惑った要因の一つだったと思います。でもとにかく、この作品に出たことにより、私の中で多くが変わったことは事実です。
それでは監督にお聞きしたいのですが、俳優にこのような微妙で難しい役を、台本もリハーサルもなく演じさせるコツのようなものはあるのですか。
デュモン監督:コツなんかありません。目の前にある仕事をただただこなしていく、それだけです。 まず、適切なキャスティングが非常に重要になります。精神的にも肉体的にも役に入っていく準備ができている人間を選ぶことです。 そして実際に撮影が始まったら、俳優自身が自分たちが演じる人間を考察し、探しつづけるしかない。監督である私は、各カットを撮りながら、そこにあるハーモニーを見つけることだと思っています。
映画を観ながら、登場人物が次にどんな行動に出るのか予想できなかったんですが、監督は撮りながら予想できたのでしょうか?
デュモン監督:もちろん俳優の次の反応を予想することは不可能です。私はシナリオは書きますが、その中の私のイメージと現実との断絶を期待しています。そこに対立や真実が生じることが大切なのです。そして両者の間のバランスをみつけるのが私の仕事であり、また、興味をひかれるところでもあります。俳優はそういう意味ではクリエイティブで、ある意味調和的であると言えるでしょう。 私は、俳優が監督の操り人形と化すことに全く興味がありません。私が演技指導をすれば、彼らは反応します。時にいやだと言うこともあります。この関係性こそが創造、クリエイティビティだと思うのです。
監督はよく素人を起用なさることで有名ですね。97年のデビュー作「ジーザスの日々」では求人広告を見て出演者を決めたそうですが、今回はどのように決められたのでしょうか?
デュモン監督:サミュエル(・ボワダン)は「ジーザスの日々」に出演してくれていたので知っていました。そしてこの「フランドル」は、彼のために作られたと言っても良いでしょう。 他の俳優たちは、長い時間をかけて選びました。この映画を撮ったのは私の故郷、バイユールですが、裁判を傍聴したり、区役所に行って、町に住む人々を見、役のイメージに合った人を探したのです。でもたとえイメージに合っている人を見つけても、彼もしくは彼女が実際にその役を演じることができるかというと、そうとも限りません。そんなこんなで時間がかかり、気づけば2年が経っていました。
編集部の呟き
『フランス映画祭2007』への参加作品ということでインタビューに答えてくださった、デュモン監督と主演のお二人でしたが、とにかく過密スケジュールだったようです。映画では体当たり演技ながらも初々しさを感じさせた主演のルルーさんとボワダンさん。今後も俳優活動を続けていきたいですか?という質問に、揃って「oui(はい)」と答えていたのが印象的でした。
(取材・文・写真:スワスワ)
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