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インタビュー
『呉清源 極みの棋譜』チャン・チェン インタビュー
『呉清源 極みの棋譜』チャン・チェン インタビュー
ちなみに僕は、今も囲碁が下手なんですよ(笑)
故エドワード・ヤン監督の『枯嶺街少年殺人事件』で鮮烈なデビューを飾り、ウォン・カーウァイ監督の秘蔵っ子としても知られるチャン・チェン(張震)。端麗な容姿に加え、確実な演技力と存在感は、同年代の俳優の中でも明らかに突出している。今回は、『赤壁』(ジョン・ウー監督)の撮影の合間を縫って、本作プロモーションのため、来日してくれた。
profile
[チャン・チェン]
1976年、台北生まれ。父親は名優、チャン・クオチュー。14歳で故エドワード・ヤン監督の『枯嶺街少年殺人事件』(91)に主演し、衝撃的なスクリーン・デビューを飾る。その後、次々と話題作に出演し、アジア映画の若手俳優のトップとして世界中から注目を集める。主な出演作に、『ブエノスアイレス』(97/ウォン・カーウァイ監督)、『グリーン・デスティニー』(00/アン・リー監督)、『2046』(04/ウォン・カーウァイ監督)、『百年恋歌』(05/ホウ・シャオシェン監督)等、また韓国の鬼才キム・ギドク監督作に主演した『Breath』(07)の公開も待たれる。
『呉清源 極みの棋譜』
配給:エスピーオー
11月17日(土)、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
オフィシャルサイト
まず、実在の人物で、今もご存命でいらっしゃる天才棋士、呉清源さんを演じるにあたり、チャンさんが大切にした“心”とはなんだったのでしょうか?
おっしゃる通り、呉清源先生は今もご存命で、そして先生を知っている方はたくさんいらっしゃるわけですし、どういう風に演じたら良いか、非常にプレッシャーを感じたのは事実です。とにかく僕の演技が少しでもご本人に近づくよう、気をつけました。

人物像を作りあげていくにあたっては、田監督に助けられましたね。衣装など、見た目もご本人そっくりに作りこんでくれましたし、あと演じる上では、呉先生は寡黙なんだけれども、実は非常に親しみやすい方でいらっしゃいます。そういう部分を表現して近づけていこうと、監督と話し合いました。
 
それまで囲碁の経験もなければ、呉清源さんについてもあまりご存知なかったと聞きましたが、囲碁とは無縁だったチャンさんが、この作品への出演を決めたのはなぜですか?
初めて監督とお会いした時に、呉先生の話を色々伺いました。僕よりももっと上の世代の方には呉先生はとても有名ですが、僕はほとんど知らなかったので、その後、自分でもリサーチをしようと、先生の書かれた自伝を読んだんです。そしてとても感動しました。当時、先生にとって、生きる環境はとても厳しかったはずです。そして今の世の中にあっても、先生のように純粋な人を見つけるのは難しいでしょう。とにかくその自伝がきっかけで興味をもち、お引き受けしたのです。

ちなみに僕は、今も囲碁が下手なんですよ(笑)。
『クローズZERO』山田孝之 単独インタビュー
当時の呉清源さんのファッションは、メガネや和装などとても特徴的で、今見てもおしゃれだと思いましたが、この作品のためにワダエミさんが作った衣装はいかがでしたか?
和装のシーンが多いので、自分としてはとても新鮮でした。ワダさんとも色々お話をしたんですが、呉先生の心情の変化に合わせて衣装のカラーやトーンなどに微妙な変化を織り込んでいったそうです。そういった細部へのこだわりが、映画全体に流れる詩的な雰囲気の一要素となっていると思います。

ワダさんは、和服以外の中国服などもリサーチをなさったそうです。呉先生は、当時ご自分で服をデザインしたり、着物の家紋もご自分でお書きになっていたそうで、そこらへんも踏まえた上で、衣装を作られたと聞きました。
先日亡くなったエドワード・ヤン監督を始め、これまでウォン・カーウァイ監督、ホウ・シャオシェン監督など、錚々たる監督とお仕事をなさってきたチャンさんですが、今回、田壮壮監督との初めてのお仕事はいかがでしたか?また映画を拝見し、一人の人間の心の宇宙を表現するのはとても難しかったのではないかと思いましたが、どのように役作りを行ったのか教えてください。
今回僕がまず感じたのは、今まで出演してきた映画とは、雰囲気がまったく違うということでした。大陸(中国本土)の監督と仕事をするのは初めてだったんですが、今でも覚えているのは、初めて監督とお会いした時、ちょっとだけしか話さなかったのにまるで以前から知っているかのような親しみを感じたことです。ご縁のようなものを感じましたね。

田監督は、俳優に細かく演技をつけることをせず、生活に溶け込む感じで自然に役に入らせる方法をとる方です。もちろん脚本や人物については、常に監督と話し合いますけど、議論を重ねた上で撮影に入ると、その中で暗黙の了解みたいなものが生まれるんです。カメラマンともそういうやり方でしたね。その点も、田監督独特な作り方だと思いました。

最初にお会いした段階で、監督は僕を起用すると決めてくださったそうですが、日本語のセリフが多いことや、あの年代のことをあまり知らないなど、役作りの上で難しい点が少なくなかったので、撮影前に監督と日本に行ったり、その後も1ヶ月程、一人で日本に滞在したんです。毎朝起きて囲碁の練習をし、午後になると自伝を読み、夜、代々木あたりまでジョギングするという、とてもシンプルな生活でした。囲碁というのはそもそもとても静かなものですが、教わる前に、毎回30分ほど正座をし、瞑想して、心を静かにする練習もしましたよ。そうやって役作りに取り組みました。


――日本での生活はいかがでしたか?

外国で生活するというのは、まず気分がどうしたって違いますよね。滞在中に日本人の友達も大勢できました。

そう言えば、面白いことがあったんです。ある日、ジョギングの最中に細い小道に入ったら、台湾出身の囲碁の名士で、呉先生のお弟子さんにあたる林海峯さんのお宅を偶然見つけたんです。表札がかかっていたので分かったんですが、「え?ここが林海峯さんの家!?」ってびっくりしました。「僕の弟子じゃないか!」ってね(笑)。後日、ご本人とお話をする機会にも恵まれましたが、あれは本当に偶然でしたね。
『呉清源 極みの棋譜』チャン・チェン インタビュー
囲碁の道を追求し、ひたすら究めるという呉清源さんの生き方は、チャンさんの役者への姿勢とも相通ずるのではないかと思ったのですが、チャンさんにとって“演じる”とはどういうことですか。また、そもそも役者になったきっかけは何だったのですか?
一言では言い切れない、難しい質問ですね(笑)。恐らく役者それぞれ、求めている道は違うと思います。例えば、普段の自分とは違う側面を表現したり、常に違う役に挑戦することを追及する役者もいるでしょう。僕自身について言えば、父はプロの俳優でしたが、僕は専門的な演技の勉強をしないまま映画の世界に入ったんです。最初の何作かは、ただ楽しかったのでやっていたという感じで、演技とはなにか、芝居とはなにかを模索していた状態でした。たまに、もうやりたくないと思ったこともあったくらいです。そんな状態だったので、観る人には僕の演技ではなく、作品そのものを認めてもらいたいと思ってやっていました。

今はもちろん演技に対して情熱をもっています。そして、撮影の段階から楽しみ、自分自身満足できることが大切だと思っています。それが自分の生きる活力になると思うので。
今後、一緒に仕事をしたい方はいらっしゃいますか?
考え出すと、キリがなくなりますね(笑)。ただ僕は、基本的にオファーがくると、脚本を読んで決めているんです。機会があればもちろん色んな人とお仕事をしたいですが、常にオープンに、これまで一緒に仕事をしたことがある人でもない人でも、おもしろそうな作品だったら出演したいですね。
編集部の呟き
『ブエノスアイレス』から大好きだった“生”チャン・チェンは、もう言葉を失くすほど端正で美しかったです。インタビューは8月の夏の盛りに行われたんですが、冷たいお水が出されると、「お湯にしてください」と変えてもらっていたチャン・チェン。そう言えば私の中国人の友達も、うちに遊びに来ると「あったまって体にいいから」といつもお湯を飲んでいたのを思い出しました。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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