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インタビュー
『自虐の詩』遠藤憲一 単独インタビュー
『自虐の詩』遠藤憲一 単独インタビュー
自分の役のことよりもまず、台本のおもしろさに惹かれて「やりたい」と思いました
“日本一泣ける4コマ漫画”として、文化人や多くの読者から熱狂的な支持を受けている業田良家原作の漫画『自虐の詩』が遂に映画化!『ケイゾク』『TRICK』シリーズなどで独自の世界観をもつ堤幸彦監督が、ギャグや小ネタ、ぶっとびCGてんこ盛りの中で、幸も不幸も乗り越えた人生の真実を描き出したこの作品。今回はこの映画に“あさひ屋のマスター役”として出演した遠藤憲一さんにお話を伺った。
profile
[遠藤憲一]
1983年NHKドラマ『壬生の恋歌』でデビュー。映画『金融腐蝕列島 呪縛』(原田眞人監督)の特捜検事役を陰影豊かに演じ、注目を集める。以降も男っぽさと幅広い演技力で、映画やドラマ、Vシネマ等に活躍し、日本映画になくてはならない個性派俳優としての地位 を確立。『DISTANCE』(是枝裕和監督)で2002年度第16回高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞。その他の主な出演作に『あずみ』『妖怪大戦争』、堤幸彦監督による『明日の記憶』『大帝の剣』等がある。
『自虐の詩』
配給:松竹
10月27日(土)、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
オフィシャルサイト
今回遠藤さんは“あさひ屋のマスター”というけっこう強烈な役を演じられたわけですが、この役に決まったときの率直な感想をお願いします。
実はこの前の堤さんの映画『大帝の剣』で地方ロケに行っているときに、この『自虐の詩』の準備項の台本を、監督に「ちょっと読んでみてよ」と渡されたんです。それで、「この役(あさひ屋のマスター)でやってみてほしいんだけど」と言われまして。でもとにかく役の前に、僕あんまりこんなことってないんですが、台本を見てじーんときてしまいまして。原作の4コマ漫画も読んだことなかったのですが、最後の幸江の詩にうるっときたり、とにかく本当に感動したので、それを率直に堤さんに伝えて「やらせて頂きます」と言いました。自分の役のことよりも、まず台本のおもしろさに惹かれた感じですね。

Q:あさひ屋のマスターを演じることについてはどうでしたか?

普段はけっこう強面なキャラが多いんですが、いつも堤さんはどっちかっていうと滑稽なキャラで使ってくれるんですよね。そういう部分でも面白そうだったので、「是非やらせてください!」という感じでした。

Q:役作りはやはり監督と相談されたんですか?

いや、堤さんはあまり事前に「こうしてああして」と言わない方なので、相談するというか…現場に行って、自分で色々やってみて、それがダメなら「もうちょっとこうしてみて」と言われたり、良ければ「それでやろう」というかんじで、その場で試しながらやっていきました。
“あさひ屋のマスター”はバリバリの大阪人という設定なので映画の中で遠藤さんは達者な関西弁をしゃべっておられましたが、言葉遣いは苦労されたんでしょうか?
そうなんですよ!先ほど現場で色々試しながらやったと言いましたが、アドリブを入れようとするとどうしても標準語になっちゃって(笑)。だから制約されたセリフの中で、軽〜く空回りしない程度に遊んでみましたね。コメディって、やりすぎるとすぐ空回りしちゃうんで、そのあたりの調節に苦労しました(笑)。

Q:セリフのひとつひとつが長かったですもんね。

そうなんです!すごく長いから、空回りやすいっていう…(笑)。店のお客さんをやってくれた人たちも、最初は僕の芝居への絡み方がよく分からなかったらしくて、結構僕がひとりで芝居してる感じだったんですが、3テイク目くらいからは段々つかんでもらえたのか、一緒にノッて絡んできてくれましたね。

Q:関西弁の練習は結構されたんですか?

一応テープはもらってるし、方言指導の方もいるんだけど、やっぱりノッてくるとね〜(笑)。静かにしゃべる分にはいいんだけど、コメディってやっぱりノリじゃないですか。それでノッてくるとイントネーションとかムチャクチャになっちゃって、何回か方言指導の方に「さっきのここが違いました」っていう指摘を受けながら練習しました。“間違えないように注意しながらノッていく”っていうのが、方言のある芝居をするときに一番大変なことですね。
今回は中谷美紀さんとの共演シーンが多かった遠藤さんですが、中谷さんの印象はいかがでしたか?
いやもう、綺麗で、妖しくて…うん、いいよね(笑)。ただ、僕と中谷さんは撮影の日までお会いしたことがなかったので、「この強面の人に面白いあさひ屋のマスターができるのかしら?」と思っているんじゃないかと心配しました。けど実際現場入って演じていくと中谷さんから「キモかわいい」と言われるようになって、まあ最終的にはただの「きもちわるい」に変わってましたけど(笑)。一緒にやっていると「あ、この演技じゃイヤなのかな」とかだんだん理解できるようになってきたので、ちゃんと打ち解けられて、お互いうまくやれたと思っています。
『大帝の剣』でも共演されていた阿部寛さんとも今回少しだけ共演シーンがありましたが、いかがでしたか?
もう阿部さんとは、『大帝の剣』の広島ロケのとき夜に何度も飲んで話はしているので、息はピッタリというか、何をしてもお互い大丈夫みたいな感じでしたね。自分だけ先に撮影が終わって、その日、阿部さんはいなかったんですが、「今日で撮影終わったので地元で方言指導の方と飲んでる」と阿部さんに言ったら、わざわざ阿部さんが来てくれて「お疲れ様でした」と言ってくださったり、とても熱い方ですね。
『自虐の詩』遠藤憲一 単独インタビュー
では西田敏行さんと共演の感想は?
西田さんとは昔大河ドラマで少しだけご一緒に出演したことがあったのですが、ちゃんと絡んだことはなくて、コメディでは絶対に共演したいと思っていた方だったので、同じ場面で演じられたことがもう幸せでした!しかも結構軽いタッチのことをやり合うというそのスリリングな感じがとても楽しくかったですね。

Q:西田さんはアドリブが多かったようですが…?

そうそう、アドリブがごっそり出てくるから、そこに臨機応変に対応していかなきゃいけないし…。けど西田さんは絶対本番で何か出してくるだろうと思っていたから、それにどう返そうかというゲームみたいなのが面白かったです(笑)。
映画やドラマで何本か一緒にお仕事をされている堤監督ですが、今回は監督とどんなお話をされたのでしょうか。
堤さんと最初に会ったのは、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の時で、しかもそのときは最終回しか会わなくて、あまり話もしなかったんですよ。そしてそこから何のお呼びも掛からないで10年くらい過ぎて、数年前にテレビの時代劇の仕事に呼ばれて、堤さんのキャスティングかどうか定かではないんですけど、そこでちょっと間の抜けた役を演じたんです。そこから出会いが始まって、よく呼んでくれるようになりましたね。

この顔でちょっとくずれた部分とか弱さとか、そういうのを出すのがすごく好きみたいで(笑)。先程も話した通り「ああしろこうしろ」と現場であまり言わない方なのですが、やってみて監督が良いと思ってくださった時なんかは直感で分かるんですね。台本に凝り固まらずこちらの可能性を広げてくれて挑戦させてくれるので、現場での監督とのセッションみたいなのが楽しいです。


Q:監督とは演技以外のことも話されるのですか?

ん〜、雑談くらいしかしないかな。「次こんなのをやろうとおもってるんだ」とか「この前あそこ行って来たんだ」とかそれくらいです。すぐに切り替えられないから、あんまり僕は現場でペラペラおしゃべりする方ではないのでね。
普段の遠藤さんのキャラが想像できないのですが、“あさひ屋のマスター”に近いってことは…ないですよね?(笑)
いやぁ…、どっちかっていうとあの役に近いと思うよ。うん、結構近い…よね?(そばにいらした遠藤さんの奥さんがすごく笑ってらっしゃいました。)

ああいう風にプロポーズするとかそういうのはないけど、あのドタバタ加減とか、どっちかっていうとあんな感じです。特に飲んだときの姿なんかは、まさにあの感じ(笑)。


Q:なるほど。では“あさひ屋のマスター”は“飲んだときの遠藤さん”ということで(笑)。

はい、そうですね(笑)。
遠藤さんの公式サイトでもご自身が撮られた写真をお載せになっていますが、現場では何か撮られたんですか?
20代の頃、写真もそうだし、あと8oフィルムで自主映画撮ったり、舞台の演出や脚本書いたりしていて、そんなことをしてる内に、最後の最後まで結局やり続けてるのが写真なんですよ。けど撮影現場に持ってくと、こっち(カメラ)の遊びの方にばかり没頭しちゃうから、一応バッグにデジカメはいつも持ち歩いてるんですが、レフカメラは現場には持っていかないようにしています。
最後に、この映画に関してみなさんにメッセージをお願いします。
僕が自分で見ても後半ほとんど泣きっぱなしだったくらい、笑わせてくれるし泣ける映画です。どの世代の方が見てもイヤな印象は絶対に受けないと思うような、家族で見られる作品に久々に出会えたなという感じ。いろんな世代の方が楽しめる映画になっていると思うので、ご家族で是非ご覧になってください!
編集部の呟き
こちらが質問した内容に対して、テンポ良く、面白く、話を膨らませて丁寧に答えてくださった遠藤さん。帰りのエレベーターでも一緒だったのですが、全員が降りるまでずっと自らボタンを押して待ってくださっていたり、本当に紳士的な優しい方でした。マネージャーでもある奥さんとアイコンタクトしながらインタビューに答えられる様子も、とてもステキで印象的でした。もっとじっくりお話していたいと思ってしまいました!
(取材・文・写真:宮崎彩加)
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