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インタビュー
『学校の階段』佐々木浩久監督インタビュー
『学校の階段』佐々木浩久監督インタビュー
この作品は一見変わっていますが、王道のアクション青春ムービーというか、変化球なしのストレートな映画なんです
ある高校の非公認部活“階段部”に入部することで、新しい自分を見出していく普通の女の子の成長を描いた本作『学校の階段』。歌あり、CGありの学園スポーツ映画を撮ったのは、『発狂する唇』など“発狂シリーズ”で知られる佐々木浩久監督。本作について話を聞いた。
profile
[佐々木浩久監督]
1961年北海道生まれ。黒沢清監督の助監督として師事したことを皮切りに、94年に『ナチョラル・ウーマン』でデビューする。その後、数多くのVシネマを手がけ、00年にテアトル新宿のレイトショー記録を打ち立てた『発狂する唇』、翌年には『血を吸う宇宙』を発表し、カルト的人気を博した発狂シリーズを世に生み出し異才と評される。04年には、BS-iで放送された、携帯電話を武器に難事件を解決する大ヒットドラマ「ケータイ刑事銭形泪」を手掛け、06年に過去の出演者である黒川芽以、堀北真希、夏帆主演で『ケータイ刑事 THE MOVIE』を監督、大ヒットを記録した。
『学校の階段』
4月28日(土)シネマート六本木にて疾走ロードショー!
配給:アンプラグド
オフィシャルサイト:http://kaidan.gyao.jp/
この映画を撮るようになった経由を教えて下さい。
最初は角川映画さんから、こういう原作があるんですけど、という相談を受けたんです。それで僕なりに原作を読んだんですけど、読むといろんなことが出来る要素が見つかったんですね。まあ小説自体は非常にぶっ飛んだものだったのですが、基本は、オーソドックスなスポコンものなので、リアリティを見せるにはどうやって撮ろうかなと考えていました。
一番メインで描こうと思ったのはどこですか?
スポーツの部分、階段レースのところですね。あとは、階段部と生徒会との対立とか。 昔ロバート・アルトリッチ監督の『北国の帝王』という映画があったんです。浮浪者たちがタダで列車に乗るという、タダ乗りする側の男たちと、それを阻止する駅員たちのバトルを描いた作品で、まあ鉄道アクションものですね。僕はそれがとても面白くて、こういう一見、他人にとってはどうでもいいことに焦点を当ててる映画が割と好きなんですよ。で、この映画も、同じく一見他人から見るとどうでもいい“階段部”というのをモチーフにして、それを走る側と阻止する側とのドラマを作ったら面白いんではないかと思って、そこも大事にしましたね。
アクションでありながらも、主人公里美(黒川芽似以)が、同年代の方たちが共感するような、“自分探しをしていく”というテーマも入っていますよね。
そうなんですよ。それは、原作者側から“自分探し”というテーマを入れて欲しいという要望があったんです。それをどう組み入れるかというのは、とても苦労しましたね。対立するアクションシーンが後半にあるので、そこまで引っ張っていくドラマ性、つまり主人公が弱い自分から踏み込んでいく部分を、ちゃんと描きたいな、とは思っていました。僕の今までの作品は、カラーが決まった人が主人公というパターンが多かったんです。今回のようにカラーがない、優柔不断な弱い女の子がだんだん自我に目覚めていく、そういう成長の話も描きたいなと思っていました。
“階段部”というだけあって、走るシーンが非常に多かったのですが、その辺の苦労はいかがでしたか?
芝居よりもむしろそっちにウエイトを置きましたね。クランクイン前に、どういう姿で女の子が走ると一番かっこいいのか、というのを考えたんです。実際は足よりも、腕の振り方なんですよね。手がだらしないとかっこ悪いですから、きちんと振り上げて走るというのを役者さんにも徹底してもらいました。 それこそ、お芝居のリハーサルはやらなかったんですが、代々木の運動場に夜集まってもらって、毎日1、2時間、走る練習をしました。役者さんも大変だったと思いますが、本当に一番大変だったのは、カメラマンなんですよ。
ブレないで、キレイに走ってる姿を撮ってもらわないといけないので、普通の軽量のハイビジョンカメラに35ミリのフィルムレンズをつけて撮りました。カメラマンが、岩井俊二さんの映画などを撮っていた、ビジュアルをキレイに取撮れる方だったので、おかげ様ですごくいい絵ができましたよ。
劇中で登場人物たちがいきなりラップのリズムに合わせて自己紹介したりと、ミュージカル要素も取り入れられていますが、それは何故ですか?
僕自身、インド映画が大好きで、歌ったり踊ったりするのが好きなんですよ。先ほど言った、自分探しのテーマを織り込んで行く際に、小説だと自分がどう思ったかが書けるけど、映画だと全部ナレーションになってしまうんですよ。僕はそれがあまりいい表現だとは思わないですし、台詞で「私はこう思います」、というのをしゃべらせるのも嫌だったので、例えば階段部にどうして自分が入りたいんだろうと思ったら、歌えばいいじゃないかな、と。インド映画なんて、まさにそうなんですけど、感情が盛り上がっていく時に歌になる、そういう要素として入れたんです。

Q:見ててちょっとびっくりしました(笑)。

そうですよね(笑)。特に映画の真ん中あたりにまとめて出てくるから、この映画いつまで歌い続けるんだろう、なんて思われると思うんですよ。 でも、例えば昔の植木等さんの映画とかは、しょっちゅう歌ってたんです。ある時からそういった表現が日本映画から突然なくなってしまって。僕としては娯楽映画なんだから、別に何をやってもいいと思ってるんですよ。歌の方が分かりやすいし、何より楽しいですから。
主演の黒川芽似以さんとは「ケータイ刑事」と今回で2本目のお仕事になりますが、どういう女優さんですか?
実際は「ケータイ刑事」はテレビシリーズもやってるので、108本くらいは一緒にやってますね。 この映画は、主演が彼女に決まった段階で、彼女の魅力が出るよう、本を書き直しました。特に後半は、見得を切るというか、凛々しいシーンが多いんですが、そういうことが出来る若い女優さんって彼女くらいしかいないんですよ。それでいて、ちゃんと泣きの芝居も出来ますしね。最近はわりと雰囲気でもっていく女優さんが多いんですが、黒川さんはきちんとした芝居が出来る女優さんなんです。

Q:一番の魅力はどこだと思いますか?

やっぱり強さを出せるというところですね。凛々しいヒロインが出来る子だと思います。
監督自身は学生時代、部活に対しての思い出はありますか?
全然ないです(笑)。僕は、学校を早退して映画を見に行く映画小僧だったので、勉強していたのは受験の時くらいでした。あとは高校一年の時から名画座で『仁義なき戦い』とか映画ばかりを見てましたから(笑)。
今までの監督の作品は、カルト映画と言われたりなど、どちらかというとマニアな層に受け入れられる作品が多かったと思いますが、現在邦画バブルと言われる時代になっても、そういった路線で映画作りをしていこうとお考えですか?
今これだけ映画がバブルになったにも関わらず、娯楽の王道みたいな映画がないと思っています。“究極のエンターテインメント”と呼べる映画がないんですよね。だから僕が敢えてこういう作品を作ろうと思ったのは、ここ最近の状況を見て、意外にみんなちゃんとした映画を作ってないってことなんです。それこそ、『日本沈没』は大ヒットしましたが、それですら王道はいってではないというか、随分外しちゃってるんですよ。だから、僕はある時期から徹底的に娯楽映画の要素を入れた映画を作ろうと思っていました。 結局みんなヒットさせたいから、差別化を図った映画を作りたがるんですけど、そうなると普通の映画というのがなかなか出来てこないんです。だから、僕は子供の頃から見てきたような映画をちゃんと作りたいと思っています。この映画もそういった意味では正統派の映画なんですよ。一見変わっていますけど、実に王道のアクション青春ムービーというか、変化球なしのストレートな映画なんです。

Q:その影響は学生時代に見てきた映画が大きいですか?

そうですね。映画をずっと見てきた時のあの影響は大きいです。昔からずっと娯楽活劇映画というのを撮りたくて、アメリカでは普通のようにやっていることなんですが、日本ではなかなか出来ないんですよ。もちろん予算の問題もありますけどね。

Q:一番心に残る、自分を変えた一作というのはありますか?

それはもう『ダーティ・ハリー』ですね。イーストウッドが大好きなんですよ。今でも見てます。あとは、70年代の監督たちの映画も好きですね。
日本でアクション映画を撮ることの難しさを教えて下さい。
やはりロケーションする場所がないってのが一番大きいですね。許可が下りるところが少ないんですよ。あとは、ニーズが少なくなってきてるというのもあります。今これだけ映画があるのに映画の種類は少ないんです。ドラマ、恋愛ものばかりですからね。 その原因の一つは、男が映画を見なくなったからだと思います。または、業界が見なくなったと思い込んでいる。昔は東映さんがアクションものをよくやってたんですけど、あれは、女性が入りにくいような、男性しか行かない映画館だったんですね。それが80年代の半ばくらいから、映画を見る層が変わってきて男性があまり見なくなっていったんです。それは映画だけでなくてテレビもそうで、昔は松田優作さんの刑事アクションものなどがあったんですけど、今は一切ないですよね。ユーザーが女性しかいないというか。野球だって視聴率が取れない時代ですから。 一時期それがVシネマで息づいていたんですけど、それも少なくなって、そういうのを見る人がどこかにいっちゃったんですね。僕は業界がそういう人たちから娯楽を奪ったんじゃないかと思ってるんですよ。今普通のおじさんたちが映画館に行って見る映画ってあまりないと思いますから。なので、僕はやはりそういう人たちに向けた映画を作らないといけない、と思っています。
編集部の呟き
映画自体は好みが分かれる作品だと思うが、監督の話を聞くと、有頂天になりつつある今の映画産業に対して、非常に警戒心を抱いている印象を持った。確かに、以前に比べて人は映画を見に行き、資金も十分に増え若手も育つという、業界にとってはまさに“黄金の時代”になった。もはや“映画(邦画)は金にならない”という説は吹き飛んでしまった印象すらある。しかし、監督が抱く“警戒心”が理解できるのは、たくさん量産されてても、その中で“残る映画”というのはどのくらいあるのだろう、ということだ。そんなことを考えさせられるインタビューだった。
(取材・文・写真:篠原藍)
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