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インタビュー
『華麗なる恋の舞台で』イシュトヴァン・サボー監督インタビュー
イシュトヴァン・サボー監督
この映画は、お菓子のクリームようにライトなタッチで描かれているが、その奥には、人生における非常に深遠な問題が隠されている。
英国の文豪サマセット・モームの「劇場」を原作に、人気女優の葛藤や悩み、恋と失恋、自尊心との闘いを軽やかなタッチで描いた『華麗なる恋の舞台で』。主演のアネット・ベニングに05年のゴールデングローブ賞主演女優賞をはじめ数々の賞をもたらした本作が、いよいよ日本でも公開される。本作のメガホンを執ったハンガリーの巨匠イシュトヴァン・サボー監督が来日し、インタビューに応じてくれた。
profile
[イシュトヴァン・サボー監督]
1938年、ハンガリー・ブタペストに生まれる。26歳の若さで最初の長編映画の監督を務めた『The Age of Daydreaming』(64・日本未公開)で、ロカルノ映画祭シルバー・セイル賞、ハンガリー映画祭では最優秀監督に贈られる審査員特別賞を受賞。その後『コンフィデンス/信頼』(79)でベルリン国際映画祭 銀熊賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。続く『メフィスト』(81)では、見事アカデミー賞外国語映画賞を受賞する。『連帯長ドレル』(85・日本未公開)ではカンヌ国際映画祭審査員賞などを受賞。本作のプロデューサーでもあるロバート・ラントスと初めて組んだ『太陽の雫』(99)では、ハンガリーに住むユダヤ人家族三世代の目を通して革命に対し大胆に取り組み、ヨーロッパ映画賞3部門、カナダ・ジニー賞作品賞を受賞、またゴールデン・グローブ賞 作品賞・監督賞を含む3部門にノミネートされ、その他アメリカ・ポリティカル・フィルム・ソサエティ賞など数々の賞を受賞した。ロンドン、ベルリン、ウィーンなどの映画学校の客員教授をし、映画史の講義をしている。
『華麗なる恋の舞台で』
配給:アルシネテラン
2月10日(土)Bunkamuraル・シネマ他にて拍手喝采ロードショー
オフィシャルサイト:
http://www.alcine-terran.com/kareinaru/index02.html
サマセット・モームの「劇場」のどのようなところに魅力を感じられたのでしょうか。
最初にプロデューサーのロバート・ラントスがこの企画を持ってきたときは、多少の不安と戸惑いがあった。原作であるモームの「劇場」が持つ美しい軽妙さを映画で表現できるのか不安だったんだ。この映画は、お菓子のクリームようにライトなタッチで描かれているが、その奥には、人生における非常に深遠な問題が隠されている。年を重ねること、成功や安泰を求める心、人間関係といったテーマは私のこれまでの作品と共通しているが、今回はそれを、淡い色彩で、優しいメロディを歌うように描こうとした。重い病の薬にコーティングされた甘いチョコレートのようなものだね。完成した作品が甘いか苦いかは観客に決めてもらうしかないよ。
ヒロインのジュリアがとても魅力的に描かれていましたが、監督にとってのジュリア像とは?
ジュリアはとても才能に恵まれた女優で、その才能を周囲と分かち合いたいというエネルギーに満ち溢れている。それは、ある意味でとてもポジティブで美しいことだが、一方で、とても危険なことでもある。映画の中で、彼女の息子が「あなたは一体誰なの?」と尋ねる場面があるが、ジュリアは舞台を離れても常に役を演じているんだ。夫に対して、息子に対して、そして社会に対してね。 彼女にとって一番大切なことは、周囲を喜ばせること、そして、皆から愛されることだ。周囲に愛されたいという気持ちは、人間なら誰もが持つ健全な欲望だが、観客から拍手をもらうことだけが人生の目的になると、舞台こそが現実になって、実人生はどうでもよくなってしまう。それがジュリアにとっての大きな問題だったと思うよ。
ジュリア役を演じたアネット・ベニングの演技がとても素晴らしかったです。彼女を起用した理由をお聞かせください。
アネットは我々の第一希望の女優だった。本作の主演には、700人の観客を前にしても堂々と演技ができる、優れた舞台女優が必要だったんだ。彼女はとても勉強熱心な女優で、私は演技指導などは何もしていないよ。
本作の舞台は1930年代のイギリスですが、当時の街並みを再現するのは大変ではありませんでしたか?
そんなに難しいことではなかったよ。ヨーロッパ、特にイギリスのような小さな島国にはいまだに30年代の街並みが残されている場所もあるし、まだ生きている人もいるからね(笑)。
監督が撮影現場で一番大切にされていることは何ですか?
映画監督にはそれぞれのやり方があるし、自分が正しいかはわからないが、私はいつも、物語を“シンプルで、わかり易く、そして楽しめる”形で表現したいと思っているんだ。
そして、観客に役者の才能を最大限に見せたいと思っている。私は、役者の顔を美しく撮ることに熱中しているんだよ。顔の表情にこそ、人間の感情が最もよく現れるからね。照明も、彼らの瞳の光や美しい笑顔を一番よく見せることができるように気をつけている。 ここ日本には、世界の映画史上、最もシンプルで美しい映画を作った監督がいらっしゃるね。小津安二郎監督のことだが、彼の作品はグラスに入った水のように透明で、どんなウィスキーも敵わない豊かさを持っている。小津監督の作品や黒澤明監督の『羅生門』こそ、最もシンプルで、最も豊かな映画なんだよ。
編集部の呟き
ゆっくりと丁寧に、時に立ち上がって答えてくださったサボー監督。その一語一語が含蓄に富んでいて、ずっと耳を傾けていたいと思ったインタビューだった。本作は、アネット・ベニング演じるジュリアのキュートな魅力はもちろん、衣装や舞台のセットなど見どころ満載の映画。胸がすくラストシーンもお見逃しなく!
(取材・文・写真:山内真理子)
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