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『マイティ・ハート/愛と絆』マイケル・ウィンターボトム監督 インタビュー
『マイティ・ハート/愛と絆』マイケル・ウィンターボトム監督 インタビュー
Globe Photos/NANA TSUSHIN
ブラッド・ピットはいっさい口出ししてこなかったよ(笑)
02年、パキスタンで取材中に誘拐され殺されたウォールストリート・ジャーナルの記者、ダニエル・パール事件の真相を綴った、『マイティ・ハート/愛と絆』。主演アンジェリーナ・ジョリーの実生活のパートナーであるブラッド・ピット自ら映画化権を買い取り、製作に携わっていることも話題だが、そんなブラッド・ピットから熱いラブコールを受けたイギリスの俊英マイケル・ウィンターボトム監督が、撮影の裏側やこの作品にこめた思いを語ってくれた。
profile
[マイケル・ウィンターボトム監督]
1961年、英ランカシャー出身。テレビドラマの仕事を経て、94年に『バタフライ・キス』で監督デビュー。イギリス出身の実力派監督で、世界のさまざまなロケ地を舞台にして、社会派ドラマから文芸映画まで幅広いジャンルの作品を手がける。今回は製作担当のブラッド・ピットに才能を買われて参加し、そのパワフルな演出力を絶賛された。新作は『Genova(原題)』。代表作に、『日蔭のふたり』(96)、『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(96)、『ひかりのまち』(99)、『9 Songs』(04)がある。
『マイティ・ハート/愛と絆』
配給:UIP映画
11月23日(金/祝)、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他、全国ロードショー
オフィシャルサイト
ブラッド・ピットの映画制作会社「プランB」がこの映画の企画をあなたに持ちかけたそうですが、どういう経緯だったんですか?
04年にプランBのデデ・ガードナーがマリアンヌの本を僕にくれたんだ。読んでみてとても心が動かされた。4月にはブラッドとデデから電話があり、監督を担当することに興味があるかと聞かれた。それでアンドリューと僕はナミビアに飛び、この物語について、また僕たちがいつもどんな作品作りをしているかを話した。彼らは僕らのやり方や、慣れ親しんだスタッフを起用することを快く受け入れてくれた。それで引き受けたんだ。
アンジェリーナ・ジョリーという女優について、お聞かせください。
アンジェリーナと組めて最高だったよ。彼女には事前に、僕たちがいつもとっている方法を説明していた。1シーン1ショットで撮ることや、カメラを手持ちで回すこと、撮影量が多いことや即興を多様することなどをね。彼女はそのアイディアを気に入ってくれたようで、初日から素晴らしかったよ。

アンジーは女優として、また一個人として、可能な限り精密にマリアンヌという人物を再現してみせようと強く思っていたようだ。私が二人に出会った時は、既に彼女たちは友人同士だった。個人の体験に基づく映画を監督するにあたり、当事者である人間が自分を演じる役者をすっかり信頼しているというのは、理に適っていて、正に二人の間にはそういう信頼関係が築かれていたね。


――ブラッド・ピットからはどのような指示が?

ブラッドはいっさい口出ししてこなかったよ(笑)。
マリアンヌと対面したのはどの時点でしたか?
昨年の4月に初めてパリで会った。彼女にとっては監督候補に会う機会であり、僕にとってはマリアンヌと共に時間を過ごす機会となった。この後に全員、つまりマリアンヌ、プロデューサーであるアンドリューとデデ、そして僕とでナミビアに行き、ブラッドとアンジェリーナに会ったんだ。

――マリアンヌに会った印象は?

彼女は本当に素晴らしい人だ。ものすごく温かく、寛大で明るい。僕たちが会うべき人間へ次々と紹介してくれて、彼女が体験したことへの質問にも全て答えてくれた。それと同時に、僕たちに自由に映画づくりをさせてくれたんだ。

――実際には何人くらいの関係者に会ったのですか?

事件と関わりのあった人全員に会ったよ。これはマリアンヌの物語であるけれど、一方で色々な観点を取り入れることも不可欠だった。僕はマリアンヌとダニーのジャーナリストとして仕事にとりくむ姿勢を、この映画の本質的な部分に投影したかったんだ。そのためには人物をなるべくありのままに正確に描くことが必要だったんだ。
 
監督として、数々の対面で得た情報からどのような映画作りを目指しましたか?
マリアンヌの本が出発点であることは間違いないが、関わった色々な人に会ってみて、この事件についての彼らそれぞれの視点というものがもたらすものもあると感じたんだ。二人のジャーナリストの物語と考えるのが相応しいとね。ジャーナリストのような態度でこの物語に接したつもりだよ。この事件のありのままの姿を描くために、関係者全員の視点をとりいれたんだ。
『マイティ・ハート/愛と絆』マイケル・ウィンターボトム監督 インタビュー
時系列に沿って撮影していますが、これはなぜですか?
あの家での撮影に与えられた時間が5週間あったので、時系列で撮るのにちょうど良かったんだ。そうしたら結果として、現実と同じくらいの時間でとても多くのことを撮影できた。この手法は、俳優同士が徐々に関係を深めるのにも役立ったと思う。最終的にはマリアンヌから聞いたような人間関係があの家の中で確立されていたんだからね。最後のディナーの場面でマリアンヌが皆に気に病まないで欲しいと伝えるところなんかは、まるで実際の人たちのようだったよ。
以前にもカラチ(パキスタン最大の都市)で仕事をしていますが、現地の状況は変わりましたか?
屋外シーンのほとんどをカラチで撮影したんだけれど、最小のクルーで、大勢のパキスタン人俳優を使って行った。パキスタンで撮影するとなったら、がむしゃらにやるしかない。政府のしかるべきところから撮影許可をとりつけるのにずいぶん時間を費やしたね。一方、カラチの警察機構の協力を大いに得たりもしたよ。

――政府の認可が必要なんですか?

そう。それで内務省長官のカマル・シャーにたくさん助けてもらった。彼はダニエル・パール事件の時にカラチの州警察長官だった人物なんだ。パキスタンの警察当局とのバトルもあった。彼らはカラチ警察に我々の協力をさせないよう圧力をかけたんだ。まぁ、これはちょっとしたことで、結果的には解決され、了解が得られたんだけどね。他の国もそうだと思うけど、一つの物事に関して人によって考えることがバラバラで、出てくる意見が一貫しないんだよ。
本作でも多くの常連スタッフを起用していますが、これはあなたにとってどのくらい重要なことなのでしょうか?
彼らがいてくれると落ち着くんだ。信頼できるクルーと組めると、リラックスして臨めるのさ。今回のスタッフは皆それぞれの分野でとても才能があり、互いに尊敬しあっていた。携わる全員にとてもいい環境だったと思うよ。
俳優陣は実在の人物を演じていますが、彼らはどのように感応しましたか?
全員がとてもうまく感じを捉えていたね。彼らは自分が演じる人物への理解を深めるため、彼らと実際会って共に時間を過ごし、それぞれにとってのダニエル・パール事件を、彼ら本人の口から聞いていた。役者たちが、自分が演じる人物への責任を感じていたのは明らかだった。
ダニエルが殺害された時、あなたもパキスタンにいたそうですが、あの頃のことで何か憶えていることはありますか?
ダニーとマリアンヌがアフガン戦争の取材でパキスタンに来た01年、僕もパキスタンにいたんだ。ダニーがやっていたことが必要以上に危険なことだとは、誰も思っていなかっただろう。カラチのレストランで行われようとしている面会について、ダニーが用心深く人々のアドバイスを聞く様子を映画でも見せている。

ジャーナリストというのは、追っている人物との面会を果たすよう努力するもので、それは非常に勇気のいることでもある。とても誠実なジャーナリストだった彼は、記事に書く人々には会っておきたかったのだろう。この事件がとても衝撃的だった理由のひとつに、あのようなことがパキスタンで起こるとは誰も思っていなかったというのもあるだろう。パキスタンはイラクと違って戦時下になかったからね。ダニーは戦争ジャーナリストではなかったんだ。
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