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| 喪失の傷みを経験し、ある種のポジティブな予感をエンディングに残すところまで描きました |
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| PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で準グランプリと観客賞を受賞した木下雄介監督による初の商業映画『水の花』が完成した。『水の花』はPFF受賞作『鳥籠』の延長線上にあるともいえる作品で、父と2人で暮らす中学生の少女が、自分達を捨てた母が他の男との間に作った妹との旅を通じて体験する喪失と成長の物語だ。主演には、若干15才ながら『理由』『青いうた〜のど自慢青春編〜』などの演技で注目されている寺島咲。大きな反響を呼んだベルリン国際映画祭での上映に続き、いよいよ迎える日本公開直前、木下監督と寺島に本作への想いを聞いた。
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[木下雄介監督]
1981年7月31日東京生まれ。高校時代に映画作りに興味を持ち、早稲田大学では映画サークルに所属。自主製作した『鳥籠』(2002)が早稲田映画祭グランプリを受賞、第25回ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード2003に選ばれ、準グランプリと観客賞をダブル受賞。第15回PFFスカラシップの権利を獲得し、本作のメガホンを取った。
[寺島咲] 1990年9月23日東京生まれ。2004年、大林宣彦監督作品『理由』のヒロインに抜擢され、映画デビュー。以降『母のいる場所』(2005)・『青いうた〜のど自慢青春編〜』(2006)に出演。テレビドラマでも『3年B組金八先生』(2004)・『功名が辻』(2006)に起用され、注目されている。 |
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『水の花』
配給:ユーロスペース+ぴあ
8月5日よりユーロスペース他にて公開
オフィシャルサイト:http://www.pia.co.jp/pff/mizunohana/ |
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| 寺島さんは最初にこの映画の台本を読んだ時に、どんな印象でしたか?
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| 寺島咲:光の感じとか、それぞれのシーンの映像がイメージしやすい台本で、良い雰囲気の映画になりそうだなと思いました。 |
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| 寺島さんが演じた美奈子は殆ど無表情で笑顔のない役どころでしたが、演じる上で苦労した点はありますか? |
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| 寺島咲:美奈子は口数が少なく気持を表に出さない子でしたが、台詞が多いと台本通りに覚える方に気持をとられてしまいがちなので、逆にこの方がやりやすかったですね。妹の優ちゃんに殺意を抱くシーン(岸壁で、水の中をのぞき込む優に後ろから近づくシーン)は、台詞がなく後ろ姿だけで表現しないといけなかったので難しかったです。何を訴えたいのか判るはずの台詞はないですし、後ろ姿なので表情も見せられない。後ろ姿と体の動きだけで美奈子の殺意を表現するのですが、微妙な動きでは何も判りませんし、かといって大げさな動きは美奈子のキャラクターと違いますから、このシーンはとても難しかったです。
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| もし、寺島さんが美奈子の様な境遇だったら、どんな性格の女の子になっていますか?
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| 寺島咲:自分のお母さんが出ていくなんて全く想像できません。もしかしたら美奈子みたいになるかもしれませんが、案外何もなかったかのように過ごしているかもしれませんね。
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| 監督にとって今回の作品が初の商業映画ですが、自主映画とどんな点が違っていましたか?
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| 木下雄介:今までは、自主映画といっても自分がDVカムで撮影し、スタッフも少人数、しかも友人や後輩なので、撮る前から撮りたいものや映像のイメージが固まっていました。例えば、青味ひとつでも自分の頭の中で想像した色が撮れたのですが、商業映画では色味をカメラマンの方に伝える時に表現する言葉を持っていないといけないので、まさに毎日が修行でしたね。その道30年、40年のベテランの方達ばかりなので、そういう皆さんにどうすれば自分の想いを伝えることが出来るのか、毎日が勉強でした。
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| 木下雄介:美奈子役では約200人にオーディションをしましたが、寺島さんとは最後の頃にお会いしました。第一印象でもあっ! と思いましたが、決定的だったのはラストの口紅を塗るシーンです。ワンカットのみで、彼女がこれから向かう喪失の旅、通過儀礼を経て大人になっていくポジティブな予感を残さないといけなかったのですが、オーディションで唇を塗った役者さん達の顔を見た時に寺島さんが一番イメージに合っていました。台本の字面にあるものを、強さを持ってスクリーンで演じてくれると思ったのでお願いしました。優役の小野ひまわりちゃんは、オーディションの段階ではバレエを踊れる子という条件でしたが、100人以上の中から選びました。経験が少ないのでまだ固まっていない演技をする一方で、現場では「もう少し崩した方が良いの?」とか言ってきたり、割と感の良い子でしたね。 |
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| 前作の『鳥籠』に続き本作でも家族の喪失を描いていますが、監督にとって家族や家庭というのは大きなテーマなのですか? |
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| 木下雄介:中学の時に親友の両親が離婚したという経験もありますが、『鳥籠』を撮り終わった当時は、喪失をある種の絶望としか考えていなかったのかもしれません。『鳥籠』では、登場人物達が皆自ら死を選んだり、想像の世界に逃げ、結局は向き合わずして終わっていました。この作品で、自主映画としてはそこそこ評価され、皆も喜んでくれ、自分もやりたいことがやれました。でも、時間が経ってくると、喪失は人間が成長するための試練、大きいのか小さいのかどういう形で現れるのか判りませんが避けては通れないもので、その傷みを経験し、ある種のポジティブな予感をエンディングに残す、喪失を通して成長していく予感を残すところまで描かないと自分の中で消化できないところがありました。『水の花』では、『鳥籠』からその点を進化させ描いてみました。 |
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| 監督は『水の花』の大部分を引きで撮っていますが、その意図するところは? |
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| 木下雄介監督:ひとつには、台詞が少ないということもあります。普通の映画やテレビドラマでは、言葉で伝えますが、想いや感情を言葉や表情で的確に伝えられたら人間はもっと楽でしょうし、実際に上手くいかないからディスコミュニケーションや事件が起きるわけです。優に「何で泣いているの?」と聞かれた美奈子も「判らない」と答えていますが、人間は自分自身のことですら判らない不安定な存在ですし、だからこそ解り合いたいと思うわけです。『水の花』では言葉や表情に頼らず、説明的な台詞や過剰な演技はなるべく廃し、そこにある空気、光、音、その場の時間を通して美奈子の心象風景を切り取っていこうと思いました。ですから、引きでじっくりと時間を、周囲の空気や光や音を撮りつつ進めていく方法論で物語を描こうと思いました。
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| 監督が敬愛するトリュフォーの『大人は判ってくれない』にも似たラストシーンの先、美奈子はどこに向かって進んでいくのでしょうか? |
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| 木下雄介:この映画は“大人は判ってくれないことを判っていく少女の物語”です。脚本を書いている時から、最終的に美奈子は父・圭介との元の生活に戻り、自分を捨てた母・詩織への嫉妬心をゆっくり消化していくと考えていました。ですから、ラストショットは映画が終わると同時に新しい美奈子の物語が始まるシーンなので、あそこでズバッと切ったわけです。 |
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| 寺島さんと監督は、お互いの第一印象はいかがでしたか? 撮影を経て、その印象は変わりましたか? |
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木下雄介:美奈子は少女から大人への過渡期のようなキャラクターですが、最初に会った時の寺島さんもそういった時間に生きている子で、ある意味でこの映画はよい記録になっています。最初に会った時の顔と実際に最後に撮影したラストカショットの顔は全く別です。映画の中で彼女が旅を続けて変わったということもあるでしょうし、撮影現場を通して顔つきも変わっていったと思うし、そういったこと全てが上手く反映されて彼女が変わったと思います。
寺島咲:最初のオーディションの時の印象は、あまり喋らず、髪の毛も坊主頭で怖そうでしたが、今はそんなことはありません。撮影を始めてみるとけっこう喋るし、映画に対して凄くこだわりを持っている監督だなと思います。 |
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木下雄介:普段はバイトをしていますが、次の映画の企画でそろそろ動き出そうと思っています。以前はビデオ屋さんでバイトをしていましたが、次の映画では東京に住む20才前後の若者を撮りたいと思っているので、今はフリーター生活を体で実感しながら企画を練っています。
寺島咲:先日、来年公開予定の新しい映画の撮影が終わったところです。あと10月より、昨年から出演している「慶次郎縁側日記」(NHK)の最新シリーズが放送されます。 |
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台詞が少ないにもかかわらず、役者のいる空間の空気・光・音を取り込み、見事な心象風景を映像化した木下監督の感性には、比類無き才能を感じさせる。新人・寺島咲による確かな演技力によるところも大きいが、今から次回作が楽しみだ。とはいえ、監督自身が「映画館で上映することを前提に画や音にこだわって脚本を書いた作品なので、ぜひ映画館に見に来てほしいです」と言っているように、まずは本作を劇場で見てほしい。 (写真・取材・文::平井景) |
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