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インタビュー
『夢遊ハワイ』 トニー・ヤン インタビュー
トニー・ヤン
見る時の心境によっていろいろな受け止め方が出来る特別な映画です。
昨年公開された『僕の恋、彼の秘密』で、日本でもファンが急増中のトニー・ヤン。この秋に公開される『夢遊ハワイ』では、小学生の頃にほのかな恋心を抱いた同級生を訪ねる兵役中の若者を演じている。台湾映画界期待のホープが、本作の魅力や映画観について語ってくれた。
profile
[トニー・ヤン]
トニー・ヤン:1982年8 月30日生まれ。17才でモデルとしてデビュー。テレビドラマ、ミュージックビデオなどで活躍後、2004年に『僕の恋、彼の秘密』で映画デビュー。純朴なゲイの青年の成長を描いた本作は大ヒットし、第41回台湾金馬賞最優秀新人賞を受賞した。最新作は、『僕の恋、彼の秘密』のDJチェン監督と再びタッグを組んだアクションコメディ『国士無双/CATCH』。
『夢遊ハワイ』
配給:IMX
9月2日より新宿武蔵野館他で公開
オフィシャルサイト:www.muyu-hawaii.jp
『夢遊ハワイ』というタイトルには、どの様な印象をお持ちですか?
最初にこのタイトルを聞いた時には撮影でハワイに行けると思ったのですが、そうではないと知り、がっかりしました(笑)。監督にとって、行ったことがないハワイは憧れの地で、とても美しい場所というイメージを持っていたそうです。そういった子供の頃の憧れは誰の心の中にもありますが、年をとるに連れどんどん美化されていきます。そのような純粋さはこの映画が描こうとしているものですし、この映画を見ることでそういうものを取り戻してほしいという想いがこのタイトルに込められていると思いました。
トニー・ヤン
初めて脚本を読んだ時の印象と、出来上がった時の感想を教えて下さい。
この映画に対しては特別な思いがあります。というのも、何度も繰り返して見たのですが、見る度に違う感じ方をしますし、感動するシーンも違います。この映画のどこが特別なのを言葉にして言うことはなかなか難しいですが、登場人物同士の関係やストーリーが、見る人によってかなり違った印象を与える作品だということです。とても面白かったという人もいるだろうし、すごく寂しい気持になった人もいるだろうし、悲しかったという人もいると思います。見た人のその時の想いやそれまでの経験によって、それぞれ違った受け止め方が出来る映画だと思います。僕自身にとっても、見る時の心境によっていろいろな受け止め方が出来る特別な映画です。
毎日監督と話し合った結果、最初の脚本からだいぶ変更されたようですね?
出来上がった映画は、元の脚本とは全てが違います。最初に監督から「とにかくリアルに、君たちのありのままを出してほしい」と言われ、撮影開始前の1ヶ月間は、役者全員が殆ど一緒に生活しました。その結果お互いにとても親しくなり、まさに映画の中と同じような人間関係になってから撮影に臨みました。そういった状況をそのまま活かして撮影を進めたので、元の脚本とは全然違う内容になりました。単なる役者として映画に参加したというよりも、監督と4人の役者が一緒になってこのストーリーを作り上げたという感じでした。
トニー・ヤン
今まで演じられたゲイなどのように特徴のある役どころではなく、等身大の役を演じることで、むしろ苦労されたことはありますか?
そのとおりで、自分自身を演じることが一番難しいと思います。(ゲイを演じた)『僕の恋、彼の秘密』は確かにチャレンジでしたが、一端作り上げれば簡単に役の中に入っていくことが出来ました。今回のような役は自分自身と向き合わないといけない、本当の自分とは何かということを把握しないといけません。これはけっこう難しいことですが、その点で感謝したいのは3人の共演者と監督が手助けしてくれたことです。彼等とのあうんの呼吸があったからこそ、とてもリラックスして演じることが出来たし、自分の一番純粋な部分や真の姿、魂の奥にあるものを引き出すことが出来ました。これは役者同士のコラボレーションの結果だと思います。
台湾の厳しい受験戦争の一端が描かれていますが、ご自身の学生時代には勉強は得意な方でしたか?
台湾では、大学受験の他に高校受験もかなり大変なのですが、僕は高校受験で失敗したので、高校時代は誰も僕に期待していなかったから楽でした(笑)。一番大変だったのは、小学校・中学校時代の毎日の勉強です。特に小学校を卒業するまであと半年という時に遠くに引っ越すことになり、遠距離通学させるべきか、それとも転校させるべきか悩んだ母が、学校の先生の家に僕を寄宿させてしまいました! 本当に苦痛で、家に帰ってからもおとなしく勉強しないといけないし、問題を間違えると先生からガンガン怒られるので、トイレに籠もって泣いていました。勉強が一番大変だったのはその頃です。
差し支えなければ、トニーさんの初恋を教えて下さい。
僕の初恋は小学校三年生の時です。同じクラスに好きな女の子がいたのですが、もちろん彼女はその事を知らず、僕も恥ずかしいから言えませんでした。一度、彼女に「好きな子はいるの?」と聞かれ、「いない、いない」と答えながら、コッソリ机の下で彼女を指さしていました。今にしてみれば、とても可愛い初恋だったと思います。恐らく皆さんも同じだと思いますが、子供の頃の好きな子に対する態度は大人になってからとは全く違います。今だったら、もっと具体的に、手紙を書くとか誰もがやるような行動を起こしますが、そういう行為とはかけ離れた本当に可愛らしい初恋が、未だに僕にとって一番の思い出です。
この映画で印象に残っているシーン、大変だったシーンを教えて下さい。
一番好きで印象に残っていて、しかも撮影が大変だったシーンは、アーチョウとチェン・シンシンがバス停でバスを待っているところです。あのようなシーンは監督が最初から考えてはいたのですが、どうやって表現すればいいのかずっと決めかねていて、なかなか良いアイデアが浮かびませんでした。撮影を伸ばしに伸ばして、この日に撮らないと後がないというところまで引っ張り、照明もカメラも準備が出来ても、監督はまだどうしたらいいのか決めかねていました。いきなり、「しょうがないから、そこで自由にアドリブで遊んでよ」と監督から言われましたが、言われた僕たちも困ってしまい、いろいろやってみましたが、最後にひらめいてやったのがあのシーンです。監督も気に入り、僕たちも可愛らしくできたので満足したのですが、観客の皆さんからも評判が良く、自分達の苦労が報われて嬉しかったです。
Q7
小学校の時好きだった女の子が精神的に病んでいたという本作のストーリーはちょっとショッキングですが、トニーさんが演じたアーチョウは大らかに受けとめてすごく優しく接しました。アーチョウの心境をどの様に理解しましたか?
アーチョウが同級生のチェン・シンシンを訪ねたのは小学校以来なので、最後に会ってからかなりの時間が経っています。ですから、確かに彼女が精神を病んでいると判った時には驚いたと思いますが、彼にとって耐えられないほど辛いことではなかったと思います。僕が演じたアーチョウがチェン・シンシンにどの様に対応したらいいのか判らなかったので監督に聞いたところ、「彼女を子供だと思い、欲しがっているものを全て与えればいい」といわれました。確かに子供に対する時の笑顔は心からのものですが、それがアーチョウのチェン・シンシンに対する時の気持だといわれたので、彼女が泣けばあやしてあげるし、だだをこねれば慰めればいいと言われ、彼女への対応がよく判りました。
Q7
ラスト近く、アーチョウとショアグエ、チェン・シンシンの3人で小旅行に行きますが、次に彼女に会うため精神病院に行った時には、他の患者さんへのアーチョウの態度から少し成長したと感じました。ラストシーンの後、アーチョウはチェン・シンシンに会いに行くのでしょうか?
監督のアーチョウとチェン・シンシンの描き方には、比喩があると思います。病気になったチェン・シンシンは純粋な気持ちの代表、何でも信じてしまう子供のような心の代表です。アーチョウはもう少し成長した人間、つまり純粋な気持ちを取り戻しに行くのですが、その気持ちをだんだん失いかけている人間に描かれています。ですから、アーチョウが2度目にチェン・シンシンに会いにいった時の気持はすごく複雑で、チェン・シンシンの病気が治って退院したことを喜ぶ一方で、チェン・シンシンも成長してしまったわけですから、病気が治った彼女がアーチョウ達と一緒に海辺に行って2日間を過ごしたことを忘れてしまったかもしれない。つまり、成長した人間が童心を忘れてしまっているように、チェン・シンシンがアーチョウ達と過ごした時間を忘れているかもしれないということに対する甘酸っぱい切なさのようなものを感じていると思います。

Q.あの2日間のおかげでチェン・シンシンは退院したように見えましたが?

実際には海辺で休暇を過ごしたからチェン・シンシンは治ったのだと思いますが、正常になった彼女が、かつてアーチョウやシャオグェと一緒に海に行ったことを覚えているのかどうかが切ないところなのです。
Q7
映画作りの楽しさはどこにありますか? TVドラマに出演するつもりはないのですか?
テレビドラマには出演しないわけではありませんが、今のところ、活動の中心は映画に置いています。映画の魅力は独特で、どんな俳優でも本当のところはお伝えできないと思います。僕も子供の頃から映画が好きでしたが、実際に映画に関わると、役者であろうがスタッフであろうが病みつきになるところがあります。あれだけのお金と時間とエネルギーを注いで35mmのフィルムの中に封じ込めたものは本当に美しく、見た時にすごく感動します。どんなジャンルの映画にも心血を注いで作ったものならではの楽しさがありますが、その一方で映画作りは映画に対してクレージーにならないと出来ないと思います。
編集部の呟き
礼儀正しいながらも、気取りが全くなく、親しみやすいトニー・ヤン。だが、映画に対する洞察力や愛情は、その爽やかな笑顔からは想像できないほど深い。映画よりドラマの方が勢いのある華流ムーブメントだが、台湾映画の牽引役として頑張って欲しい逸材だ。
(取材・写真・文:平井景)
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