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インタビュー
『おばちゃんチップス』船越英一郎 インタビュー
『おばちゃんチップス』船越英一郎 インタビュー
誰かと触れ合おう、誰かを心配しよう、そういう気持ちの集大成が“飴ちゃん”なのではないかと思います。
日本映画が失いかけているジャンルの一つ“人情喜劇”。そのジャンルと大阪パワーをミックスしたのが映画『おばちゃんチップス』である。笑いあり、涙あり、そしてラブストーリーありの痛快作に出演したのが、2時間サスペンスドラマの重鎮・船越英一郎。本作に対する並々ならぬ熱い思いをたっぷりとお届けします!
profile
[船越英一郎]
神奈川県生まれ。1960年7月21日生まれ。TBS日曜劇場「父の恋人」でデビュー。その後、ミステリーを軸とした2時間ドラマに約300本主演、“サスペンスドラマの帝王”の称号を持つ。俳優活動以外にもバラエティ番組への進出もめざましく、幅広く活躍している。最近の主な映画出演作は『涙そうそう』『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(06) 、『LOVEDEATH』(07年公開予定)などがある。
『おばちゃんチップス』
配給:ファントム・フィルム
シアターN渋谷、銀座シネパトス他にて公開中
オフィシャルサイト:http://www.obachan-chips.com
本作には、どのような経緯で出演されたのでしょうか?
大阪経済大学の学生たちが、大阪の経済を活性化しようと『おばちゃんチップス』というお菓子を発案して、それが採用されたんです。そのアイデアをホリプロが映画化することになりました。その流れで、田中誠監督とプロデューサーが僕を指名してきたんです。脚本を読んで素直に面白いと思ったんですが、この映画でお客さんを呼べるのかという不安はありました。僕にとってもリスクになるわけで、出演するかは僕のなかでは難しい問題でした。その他にも当然、やらなくてはいけない仕事はありますしね。この映画を撮るためには1ヶ月以上のスケジュールを確保しなければならない。それだけ犠牲を払って大丈夫なのかという不安はありました。でも、だからこそ、この映画をやるべきだと覚悟して、この作品に取り組んでみようという賭けをしたんです。
撮影は順調に進行したのでしょうか?
出演を決めたのはいいけど、映画製作は進行しなかったんですよ。本当にやきもきしました。撮影が来月に控えているのに、重要な役である麻衣子のキャスティングが決まらなかったんです。スタッフ全員が納得できるような麻衣子が見つかるまで粘ることになりました。その結果、1回だけ映画の製作が延びました。それから年を越したある日、プロデューサーが僕のところにやって来て「元day after tomorrowのボーカルで現在ソロ活動をしているmisonoを知っていますか?」とたずねてきたんです。実はたまたま、テレビをつけていたら偶然にもday after tomorrowのPVが何回か流れたことがあったので、彼女の存在は知っていました。やたらと目がでかくて可愛い子だなと。ちょっと太ってるけど(笑)。これはもしかしたら全く演技経験がない新人のほうが、面白いのではないかと思いましたね。もし、綺麗系のモデルを起用していたら、全く親近感の沸かない映画になったのかもしれません。それでこの映画に相応しいヒロインが見つかったことで、やっと映画が動き出したんですよ。
その演技初挑戦のmisonoさんの印象は?
misonoは映画の世界にのめり込んでくれましたよ。ちょうど彼女も新しいフィールドを探していたんでしょうね。全ていい方向に転がっていきました。彼女は感性が服を着て歩いているような子でしたから、現場での吸収率は高いんですよ。まるでスポンジみたいに(笑)。そういえば、このまえフジテレビの「銀幕会議2」に出演したんですが、笠井信輔さん(アナウンサー)がmisonoに物凄く興奮してましたよ。親父世代はああいう女の子に弱いんだよね。そのぐらい、映画でのmisonoの演技が素晴らしいという事なんですよね。
『幸福な食卓』 北乃きいインタビュー
大阪のおばちゃんパワーの凄さが印象に残ったのですが、このおばちゃんから学ぶべき教訓があれば教えてください。
たくさんありますね。大阪のおばちゃんはいつも飴玉を持ってるんです。なんで持ってるのかというと、自分が食べるためっていう理由もあるみたいです。これ嘘か本当かは分からないんですけど、どうやら危機管理能力に長けているようで、どんなことがあっても飴玉一つで生き延びれるみたいですね(笑)。

そのほかに、コミュニケーションツールとして飴玉を持ってるらしいんです。以前、大阪のおばちゃんに何で飴玉を持ってるのと質問したら、「だって、飴ちゃん舐めたい人がいたらすぐにあげれるでしょ」と即答です。きっとそこからコミュニケーションが始まるんですね。誰かと触れ合おう、誰かを心配しよう、そういう気持ちの集大成が“飴ちゃん”なのではないかと思います。

大阪のおばちゃんはお節介ですよね。誰とでもコミュニケーションをとりたいと願っている。そのコミュニケーションをとるキッカケを掴んだら有無をも言わさせず、ズカズカと心に入ってくる。普通、我々はコミュニケーションをとる際に、いろいろな順序を踏むじゃないですか。まず玄関先で、チャイムを押して扉が開いたら、「こんにちは」と挨拶をする。家に上がってお茶を出されても、相手の様子を探って飲んでいいタイミングを見つけたら飲むみたいな感じですよね。でも、大阪のおばちゃんは、全部そういう順序は抜きですからね(笑)。チャイムも押さずに「こんにちは」と家に入る。そのまま人の家の飯を食べる。最初は面食らいますけど、その向こう側にあるのは、きっと優しさなんですよね。

今の時代、隣人が何をしている人なのか全然分かりませんよ。でも、昔は子供が悪さしたら他人でもちゃんと叱ってたはずです。僕が育った時代も地域ぐるみで子育てをしてたんですよね。僕の両親は仕事の都合で家にあまり居なかったんですが、なにかにつけて隣のおじちゃんおばちゃんに叱られたり、家に寄ってご飯食ってけとか声をかけてくれたんです。そういう文化は昔はあったけど、日本から消えつつある。でも、大阪にはちゃんと残っているんです。だから大阪は面白いですね。
大阪のおばちゃんを演じていたのは、地元の主婦というのは本当ですか?
そうそう。大阪のおばちゃんを演じている女優さんは、「みかん山プロダクション」というセミプロの人たちなんですよ。いわゆる女優さんではなくて、主婦なんです。趣味で事務所に登録して女優の仕事をしているんです。当然、現場の衣装は自前なんですが、みんなゼブラや虎の柄がついた派手なアニマルファッションを着ているんです。「いい衣装ですね」って褒めると、「これは自前や!」と怒られちゃいました。現場に入ったらずっと喋ってますよ。今日の撮影は長いから、疲れますよと言ったら、おばちゃんたちが一斉に、「しゃべっとるうちにエンジンがかかんねん。ウチらは車や!バッテリーや!」って一喝されましたよ(笑)。確かに納得しました。喋れば喋るだけ、舌が回るようになるんです。これは凄いことですね。結局、撮影が終わるまで、おばちゃんの電池は切れることはなかったです(笑)。
今の10代の女の子たちはいずれ、おばちゃんになります。いわゆるおばちゃん予備軍です。これからおばちゃんになる彼女たちに、この映画を通して伝えたいことがあれば教えてください。
おばちゃん予備軍と言っていただいただけで、この映画の役目は終わってるんです。嬉しいですね。実は『おばちゃんチップス』というタイトルは最後まで抵抗したんです。この映画に出演するかわりに、タイトルは変えてくれと何度か直談判したんです。キャッチーなタイトルではあるけれど、この映画には相応しくない気がしていたんですけど、スタッフから「これは修平と麻衣子のラブストーリーでもあるけれど、その麻衣子はいつかはおばちゃんになるから、間違いなくおばちゃん予備軍なんです。ということは、“おばちゃんのかけら”なんです。だから『おばちゃんチップス』なんです」とスタッフに巧く説得されました(笑)。

若い世代の人たちは大阪のオバちゃんの言動や行動にビックリして、ああいう風になりたくないと思うかもしれませんよね。でも、表面を見るんじゃなくて、中身も見て欲しいんです。おばちゃんは人の扉を遠慮せずに開けるけど、礼儀として自分の扉も全部開けて、あっという間にコミュニケーションがとれて、お互いの深いところまで入って、しっかりした付き合いができるんですね。温泉に行くような気分で、この映画を見に来てもらいたいですね。刺激はないけど、テンポもゆっくりであったかい作品です。世の中、冬の時期で冷えてるし、ニュースも冷えたものばかりだし、是非とも温まりに劇場に足を運んでほしいなと思います。
編集部の呟き
船越英一郎さん、この映画にかける意気込みは半端なかったです。1つの質問に対して息つく暇なく喋る喋る。普通だったらあまり言いたくないことも、全部さらけ出して話してくれます。とにかく話の一つ一つが爽快でこれまた面白い。そういえば、本人いわくこれだけ喋るようになったのは最近らしく、「大阪のおばちゃんもしくはカミさん(松居一代さん)に毒されているかも」と分析してました(笑)。
(取材・文・写真:昼神幸吉)
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