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| 検閲をかいくぐるため知恵を絞ったり、様々な問題を解決しなければならないので、撮影が始まる時には既に20%しか力が残っていない
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| 世界三大映画祭を制したジャファル・パナヒ監督の最新作は、「女の子だって、スタジアムでサッカーを応援したい!」とルールに逆らって進入禁止の領域に踏み込んだ少女たちの奮闘を描いた『オフサイドガールズ』。この作品で、質の高いこれまでの伝統的なイラン映画でありながら、中学生でも楽しめるようなエンタテインメント作品を目指したというパナヒ監督にお話を伺った。
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[ジャファル・パナヒ監督] 1960年、イラン生まれ。1988年、テヘランの国立メディア大学で演出を学んだ後、TV用番組を手がけ、1994年、アッバス・キアロスタミ監督の『オリーブの林をぬけて』で助監督を務める。翌95年、長編デビュー作『白い風船』でカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞し、世界的な注目を集める。その後、00年に発表した第三作目の『チャドルと生きる』はヴェネチア国際映画祭金獅子賞などを受賞、本作品でベルリン映画祭銀熊賞を受賞した。世界の三大映画祭を制し、これまで5作品で24の国際賞を獲得。イランを代表する映画監督の一人である。
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『オフサイドガールズ』
配給:エスパース・サロウ
9月1日(土)より日比谷シャンテ シネほか全国順次ロードショー
オフィシャルサイト |
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| まず、この作品を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
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| ごく個人的な体験がきっかけでした。5、6年前にサッカーの試合に行こうと思ったら、当時12歳だった娘が一緒に行きたいとせがんできたんです。女の子はスタジアムには絶対に入れてもらえないことは分かっていたのですが、娘があまりに行きたがるので、妻に一緒に来てもらって、追い返されたら連れて帰るよう頼みました。案の定、娘は門の中に入ることができませんでした。これであきらめるかと思ったら、娘が私に、先に中に入って待っていてと言うんです。あとから追いつくから、って。絶対ムリだと思ったんですが、それでも門の中でしばらく新聞を読みながら待っていると、「パパ!」と娘がやってきたんです!びっくりしましたよ。どうやって中にもぐり込んだのかは未だに教えてくれないので謎なんですが(笑)、そんな出来事があったので、女の子がスタジアムにもぐりこむことは100%不可能なことではないんだ、と分かったんです。スタジアムで門番をしている知り合いの話では、実際、男装してもぐりこむ女の子は少なくないそうですよ。
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| プレスの中で、「現代のイランの少女たちは、古い規律を脱したいと望んでいるだろう。しかしそのことが、私が本作で言いたいことでは必ずしもない」とおっしゃっていましたが、それでは監督がこの作品で言いたかったことは何だったのでしょうか? |
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| 言いたいことやメッセージは、特に意識していないのです。私はいつも、作品とは状況を説明する場だと考えています。映画の中で提示された状況について、観た人がその人なりに考えてくれればそれで良いのです。
私は社会派の作品ばかり撮っていますが、社会派の映画をつくるのは難しいんですよ。ちょっと間違えると政治的色合いが濃くなってしまい、プロパガンダや単一的なイデオロギーの宣伝になってしまう。そこら辺の微妙な線引きが難しいのです。そしてなおかつ、いつの時代にもあてはまるような作品でなければいけないと思っています。
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| 出演者は皆さん素人さんだと聞きましたが、ポスターを見てもそうですけど、とても生き生きしてチャーミングで魅力的だったのですが、どのようにキャスティングしていったのですか?
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| 人によって様々でした。ポスターに写っている兵士役の男性は、私がアゼルバイジャンを旅したときに訪れた墓地で見かけ、その場で声をかけました(笑)。女の子たちは、一人は街でスカウトして、あとは学生です。助監督が学校に行って説明し、興味のある子達にオーディションに来てもらいました。オーディションと言っても演技をさせるのではなく、今みたいに座って普通に話をしてもらっただけです。会話をしながら、勘で選びました。 |
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| これはいつも思うんですが、イランの映画監督は、撮影前に80%のエネルギーを使っている気がします。許可をとったり、検閲をかいくぐるため知恵を絞ったり、様々な問題を解決しなければならないですから。なので、撮影が始まる時には既に20%しか力が残っていないんじゃないでしょうか(笑)。
この映画でも、撮影前の根回しは大変でしたよ。スタジアムの撮影は、試合がないときは女の子が入ることを事前に申請していましたが、試合中の撮影に関しては申請していませんでした。その時は、兵士役の男の子の父親が試合会場の門兵だったので、こっそり入れてもらえたんです。
また、私は今、イランの検閲から目をつけられていて映画を撮ることができないので、申請書には監督として別の人の名前を書きました。プラス、コネがある検閲官がいたので、彼に頼んでようやく許可を出してもらったんです。でも後で知ったのですが、その検閲官はそのことがバレて、クビになってしまったそうです。 |
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| 宗教や文化なども絡んでいるので、一言で言うのは難しいかと思いますが、この映画にも描かれているイランにおける男女間の格差について、監督自身はどのようにお考えですか?
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女性は女性としての権利を手にしなければならないと思っています。そしてその思いは、これまでの作品を観てもらえれば分かっていただけるでしょう。私の作品を観て考えてもらいたいのは、正にそういうことなのです。
Q:現在のイラン映画界は、どのような感じなんですか?
年間、約80本の映画が作られていますね。種類は、社会的なものからエンターテインメントまで様々ですが、大統領が今のアフマディネジャードになってから、検閲は更に厳しくなりました。私の場合、今回の作品も前の二作も、残念ながら国内上映許可はおりませんでした。まあ、海賊版が出ているので、今ではイラン国民も皆観ていると思いますが(笑)。 |
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日本で好きな所はありますか?との質問に、日本に来るときはいつも映画のプロモーションで忙しく、あまりあちこち廻ったことがないとおっしゃるパナヒ監督。唯一知っているのは渋谷のスクランブル交差点だとか。「あそこは一瞬で人がからっぽになって、次の瞬間、色んな方向からわーっと人が湧いてきて、とてもシネマティック!見ていて飽きない」と、茶目っ気たっぷりに話していました。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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