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| 最終的には、人は孤独になりきることは不可能だと思う。そしてそのことで僕たちは救われているのかもしれない
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| 世界中が熱狂した傑作『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から5年。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督が、待望の最新作『ショートバス』を携えて来日した。カンヌ国際映画祭をはじめ、全世界が驚嘆し、笑い、涙したこの話題作。プレスには監督自身の言葉として、「もし僕が思春期にこういう作品と出会っていたら、生きるのがずいぶん楽になったと思う」と書かれている。そんな本作品で本当の“愛”と“セックス”を描ききったキャメロン監督に、お話を伺った。
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[ジョン・キャメロン・ミッチェル監督] 1963年アメリカ、テキサス州生まれ。86年に『マイアミ5』で役者として映画デビュー。その後もブロードウェイや映画などに出演し、数々の賞にノミネートされる。98年、自ら企画、主演したミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は2年間のロングランヒットを飛ばし、同年の賞を総なめに。01年の映画版でも監督・脚本・主演を努め、サンダンス映画祭など数々の賞に輝いた。現在は、『Nigh』『Oskur Fishman』の脚本に取り組んでいる。
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『ショートバス』
配給:アスミック・エース
8月25日(土)よりシネマライズほか全国順次ロードショー
オフィシャルサイト |
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| 監督ご自身が脚本・監督を務めた作品としては、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』以来5年ぶりとなりますが、今回、この作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
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まずは普通のエクササイズとしてのセックスをどうやって扱えばいいか、というところから始まったんだ。それをかたちにすることによって、今までにない表現でセックスを描きたいと思った。そのためには、役者たちと即興を交えながら作っていくことが前提になったので、彼らに任せながらストーリーを構築していったんだ。
セックスをリアルに扱うものだから、困惑する役者も中には出てきて、去る者も出てきたよ。だからとにかく彼らにとって居心地のいい状況を作ることに心を砕いたね。
そうやって2年半かけて脚本を作っていったんだけど、その間に色々なことが、僕にも、彼らにも、社会にも起こった。9・11もそのひとつで、あの出来事は今でもニューヨークに影を落としている。この作品にも停電のシーンがあるけれど、あれも9・11以降、ニューヨークで本当に起きたことなんだよ。とにかく9・11は、僕にとっても役者にとっても、人生について改めて考え直す大きなきっかけとなった。そうしたプロセスを経たからこそ、この作品を長い年月をかけて考え、作っていくことができたんだと思うよ。
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| オーディションからワークショップ、撮影終了まで2年半もかけて一つの作品を作るということは、とても贅沢でなかなかできないことです。でも役者やスタッフとの関係や信頼を、長い時間をかけ、じっくり築いていくことは、ものを作っていく上で本来あるべき姿なんではないかととても共感しました。監督のなかで、この期間、特に意識して気をつけた点などありましたか?
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この作品の一番の目標は、役者たちにウソの演技をしないでもらうことだった。自分たちの感情に正直に、誠実にいることを要求したんだ。彼ら自身、これまでなんらかの抑圧を経験してきていたから、それに対して挑戦して欲しいという思いもあったね。自分に正直になるために、まず彼らに感情的なゴールを設定してもらうことにした。自分と役の間に共通点をみつけ、その感情がどこに行き着くかを考えてもらったんだ。
Q:予想外の出来事も多かったのではないですか?
そうだね…途中でドロップアウトしてしまった人がいたことは大きかったかな。不思議なことに、中にはセックスシーンをする前からやめてしまったキャストもいたよ(笑)。僕はあくまで、役と自分とを切り離すことを彼らに望んでいた。これはドキュメンタリーではないからね。それに、役者に客観性を保ってもらわないと、僕も監督できないし(笑)。ドロップアウトしてしまった人たちは、そこらへんの線引きうまくできなかったんだろうな。なんの説明もなしに消えてしまった人もいて、残念だったよ。そういう人は、大概若い役者に多かったね。結果的に、年齢も割といっていて、それなりに恋愛経験や人生経験を積んできた人間が残ったわけさ(笑)。 |
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| 個人的にこの作品は、生きることに迷いを感じている人たちに観てほしいと思ったのですが…。 |
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この作品が問いかけているのは、人は結局一人ぼっちなのか、一人ぼっちじゃないのかということだ。この作品に出てくるキャラクターたちは、皆孤独を抱えている。でも最後には、自分は一人じゃないことに気づくんだ。時に、痛みと引き換えにね。この映画のオープニングでジェイムズが見せるちょっと衝撃的なシーンも、そんなエピソードの一つだよ。
性的なことは未だに、悪いこと、恥ずべきこととして抑圧されている。でもセックスは本来、そんな一言でくくれない複雑で微妙なものだ。相手に触れる行為ひとつとっても、気持ちが良いタッチ、あまり良くないタッチと色々だろう?(笑)。楽しいセックス、退屈なセックス…人の数だけセックスも異なる。ポルノも、セックスの単純化の一例だよ。今の若い人はポルノからセックスを学んでいる。そういった類のものはネット上に溢れているからね。僕だって良いポルノは好きさ。でもポルノからセックスを学ぶのは問題だよ。だってそこにはなんの感情の機微も、ユーモアもないんだから。
僕たちはこの作品で、セックスや孤独、死に対する恐怖心を取り除きたかった。最終的には、人は孤独になりきることは不可能だと思う。そしてそのことで僕たちは救われているのかもしれない。
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| セックスやセクシュアリティの問題は、誰にとっても一番パーソナルなことだと思うのですが、だからこそ敢えて曝け出す手法で撮られたのでしょうか?
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そのとおり。さっきも言ったように、セックスは殆どの場合、悪いこととして隠されている場合が多い。だいたい、家族の間でもきちんと話されないだろう?
そのせいでかどうか分からないけれど、セックスに対して人々は予想以上に大きな恐怖心や不安感を抱いているかもしれないと思い至ったんだ。そしてそれはなぜだろう、とね。例えば僕たちは激しい暴力描写をスクリーンで観ても、あまり恐怖心を抱かないんじゃないかな?セックスシーンのように居心地が悪いとは感じないだろう?暴力によって人は死に得るのに…。
なぜこれまでセックスはリアルに描かれてこなかったのか。むしろ赤裸々に直接的に描くことで、セックスに対する不安や恐怖を排除できるのではないかと思ったんだ。そしてそれによって、お互いをより理解し合えるのではないかとね。
セックスって本当はとてもバカげたものだと思うよ。そして完璧でないセックスを描くことで、そのあたりを表現できるのではないかと思ったんだ。この作品でキャラクターたちが体験するセックスは、100%の完璧から程遠いものばかりだ。でもセックスにおける問題や相手との壁が、僕たちに、より人間的な感情を喚起させるんじゃないかな。
この映画において、セックスは一番のメッセージでは決してないし、ましてや一夜限りのセックスを描いたわけでもない。僕はこの作品を通じて、他者との繋がりを描きたかった。そのことは、この作品を観てもらえれば分かると思う。オープニングからセックスシーンが出てきてびっくりするかもしれないけれど、きっとこの映画を観終わる頃には、セックスのことなんてこれっぽっちも考えなくなっていると思うよ。 |
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『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の後、恋人をドラッグで失くしたというキャメロン監督は、その悲しみも、9・11による喪失も、この作品をつくることで乗り越えられたと言います。「周囲の人々が自分に向ける愛情や感情をシャットアウトせず、自分の中に取り入れ、消化すること。それは中々簡単ではないけれど、とても大切なことだし、そうできたら皆がハッピーになれるんじゃないかな」と語っていました。ちなみに、この作品の一番最初のオーディションは、“自分の感情に最も大きな影響を与えた性的経験について語ったビデオを送ること”だったそうです。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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