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『シルク』酒井園子プロデューサー 単独インタビュー
『シルク』酒井園子プロデューサー 単独インタビュー
これ以上の究極的な純愛物語はないと思いました
海を超えて巡り逢う、美しく官能に満ちた純愛。驚きの真実が語られるとき、物語は涙の結末へ―。世界26カ国で翻訳されているアレッサンドロ・バリッコの大ベストセラー小説を、カナダ・イタリア・日本の3カ国の手によって完全映画化。その日本のプロデューサーがなんと本作でプロデューサーデビューとなる酒井園子さんだ。プロデューサー業以前はバイヤーとして活躍されていた酒井さん。本作に関することからバイヤー時代のこと、ご自身の休日の過ごし方まで、様々なことを伺った。
profile
[酒井園子]
ニューヨークで生まれ、東京、サンフランシスコ、鎌倉、メキシコ、パサデナで育つ。プロダクション会社ビー・ヴァイン・ピクチャーズの設立者。同社の処女作が『シルク』。プロデュース業の前は、ギャガ・コミュニケーションズ、続いて日本ヘラルド映画のバイヤーだった。20年間のバイヤー時代に、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作、『エリザベス』、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』、『リトルダンサー』、『クジラの島の少女』といったヒット作品を買いつけた。映画以外に食への造詣も深く、日本食の料理本“The Poetical Pursuit of Food"(ランダムハウス/ポッター刊)を出版している。
『シルク』
配給:アスミック・エース
1月19日(土)、日劇3ほか東宝洋画系にて全国拡大ロードショー
オフィシャルサイト
セラーやバイヤーとしてご活躍されていた酒井さんですが、今回プロデューサーとして映画に携わるのは初めてということで、まずはその感想をお聞かせください。
想像以上に大変でした。でもバイヤーという仕事を20年近くやっていたおかげで配給や宣伝などの大切さもよくわかっていますし、その経験が今回ひとつの土台として役に立ちました。作品選びから始まって、キャスティングから資金集め…プロデューサー側に立つと、生の素材を使って料理しなければならないシェフである監督をサポートしながら一緒に映画作りをしていくので、想像以上に“チャレンジ”という感じでした。特に1本目で『シルク』というスケールの大きい作品を作ってしまったのが、結構野心的というか(笑)。

――初めてプロデュースなさった完成品をご覧になっていかがでしたか?

出来上がって本当に良かったと思いました。一つの映画をきちんと誕生させることがどんなに大変で困難なことかを改めて実感しました。今回はイタリアとカナダと日本の合作なのですが、この映画を最初に手掛けたイタリアのプロデューサーは、10年かけて作ったそうですから。映画というのは企画によってはものすごく時間がかかるもので、原作から脚本に起こして映画にすることは本当に長い道のりです。私だけでも3年以上かかりました。
『シルク』酒井園子プロデューサー 単独インタビュー
今回はなぜ『シルク』を映画にしようとお考えになったのですか?
アレッサンドロ・バリッコの原作がものすごく素敵なストーリーだったということですね。これ以上究極的な純愛物語はないと思いました。それと並行して、この物語が私の先祖の話とリンクしたんです。実は私の先祖に絹商人がいて、本当にヨーロッパから日本に来て、日本の女性と知り合って…というラブストーリーがありまして。そういう話をずっと祖母から何十年も聞いていたので、何か似た要素があると感じ、もっと深い意味でこの絹商人を描きたいと考えたんです。この絹商人がどうやって日本に来て旅をしたのかというのを自分が想像して、自分の中だけのファンタジーだったものが、この映画のおかげでリアリティを帯びたという部分はありますね。
プロデュースする上で一番苦労した点はどこですか。
一つだけ取ってみるというのは難しいですけれども、敢えて挙げるのであれば、日本のあの時代を再現することが想像以上に大変でした。なぜかというと、日本にはもう集落が残っていなかったんです。あるだろうと思って探しても日本中どこにもない。本当に日本は変わってしまったのだなぁということを改めて思い知らされました。でもそれをどうしても作りあげたくて、作り上げるのにはどうしたらいいんだろうという部分でとても苦労しました。結局は大工さんの協力を得て、集落を作っていただいたのですが、やはり苦労しただけ、やりがいがありましたね。

――今回は日本・カナダ・イタリアの合作ということで、キャスティングも苦労されたのではないですか?

そうですね。マイケル・ピット演じる主人公エルヴェ、キーラ・ナイトレイ演じる彼の妻エレーヌは二人とも静かなカップルで結構適役を探すのは大変でした。妻ヘレンは日本人の女性に近いような奥ゆかしいエスピリをもっています。でも意外に心の中には愛する夫を思う情熱が潜んでいて、それが最後にドキッとするような愛情の形になって物語を変えていきます。キーラ・ナイトレイは難しい役柄をうまくこなしてくれたと思います。日本人キャストの方では特に少女役の芦名星さんを見つけるのがとても大変で、何百人もの人たちをオーディションして、その中で芦名さんを見つけたんです。

中谷さんと役所さんに関しては、私の方からオファーさせていただきました。その理由としては、マダム・ブランシュのイメージに中谷さんがピッタリだったということ、役所さんはオーラがあって、あの年齢層でどっしりしたものをお持ちでいらっしゃったということですね。お二人とも快くOKしてくださってありがたかったですね。


――あの部分はもっとこうしておけば…といった反省点はありますか?

そういうことを言い始めるときりがないです(笑)。でも映画というのは、使いたくても使いきれないシーンがどうしてもでてきます。例えば今回の映画では、最初鳥小屋が出てきていたんですが、それが最終的には一切使われなかったりだとか。私がその中の鳥を60匹集めてきたんです。なかなかエキゾチックな鳥だったんですけど(笑)、その鳥が出てこないというのは結構残念だったなって思いますけど、まぁしょうがないですね。そういうことは編集の中で決めていくことなのであきらめるしかないんです。
今までのバイヤーとしてのお仕事と、今回のプロデューサーとしてのお仕事ではどう違いがありますか?
独立したプロデューサーの場合はお金に対する責任がすごく大きいんです。だからそういうプレッシャーはものすごくありますし、エンターテインメントとして日本や世界に通じる、きちんとした作品を誕生させるまでの苦労がものすごく大きいですし、そういう様々な責任が伴うものなので、その部分で配給会社の中のバイヤーとして置かれていた私とでは、かなり立場が違いますし異質な仕事とも言えます。

――その違いの一つに製作現場を実際に見ることができるという点も挙げられると思うのですが?

もう本当に素晴らしいマッチで、坂本さんが引き受けてくださって夢のようでした。この映画は音楽を聴いているような、しっとりとひたるような映画なので、坂本さんの音楽は本当にピッタリでした。
先程この『シルク』の物語とご自身のご先祖の方のお話がリンクしたとおっしゃっていましたが、その部分に関して実際に俳優さんに演技指導などはされたのですか?
いえ、それは監督の仕事ですから(笑)。でも意見はしました。監督はカナダの方ですから、例えば日本のイメージだったり、立ち振る舞いひとつとっても、その道のエキスパートの方々が彼の周りを囲んでお茶の指導から所作指導までしたんですが、そういう準備はきちんとしましたね。

――音楽は坂本龍一さんということですが…。

もう本当に素晴らしいマッチで、坂本さんが引き受けてくださって夢のようでした。この映画は音楽を聴いているような、しっとりとひたるような映画なので、坂本さんの音楽は本当にピッタリでした。
今度は酒井さんご自身についてお伺いしたいのですが、世界を股にかけて活躍されていると、やはり休日はありませんよね?
休日は自分で取るようにしています。映画プロデューサーというのは基本的に休日はないんです。お医者さんと一緒で、いつ何が起きても大丈夫なようにしていなければいけない。でもその中で呼吸をする時間を自分で作っています。一番大変なのはお膳立ての部分ですから。お金を集めて、キャスティングをして、撮影が開始したら監督のサポートをする立場にまわり、少し呼吸する時間が増えますが、それでも油断はできません。映画が映画館で上映するまではハラハラドキドキです。でもこの仕事をするようになって特に呼吸を意識するようになりました。深く呼吸をすること=休む事と同じですから。

――監督にバトンタッチした後は少しはリラックスできるのですか?

リラックスするということはあまりないですけど、運動したり、お料理したりとかはしますね。今回も撮影中、監督と一緒に皆でサイクリングに出かけたり、みんなでご飯を食べたり、監督がピアノを弾いて皆に聴かせてくれたりしました。ジラール監督はとても時間の使い方が上手な方でしたね。だからそういう意味で私はこの監督と出会って、アーティストとして生きていく上で彼の持っている豊かさを感じました。これは役所さんにも中谷さんにも言えることですが、皆さん大変なプレッシャーの中で仕事をしているけれども、自分たちのプライベートな空間というものをとても大事にしていらっしゃいますね。それがないと自分を見失いやすいんです。

――映画のことは一切考えず、1週間お休みがとれたらどのように過ごしますか?

ぼーっとしていたいですね(笑)。私は割と自分を大事にする方なので、ぼーっとする時間とか、おいしいものを食べるとか、犬の散歩をするとか、買い物とか、そういう時間を作ります。どこかに旅行するとかそういうことではなくて、日常的なことをして過ごす方が、私にとってはリラックスなんです。家で掃除をしたり、山積みになった請求書を払ったり(笑)、そういうことが意外と気休めになるというか、骨休みになるんです。平凡なことを逆に求めますね。普段はホテル暮らしとかスーツケース生活が多いので、そうするとやはり家で洗濯するようなことが優雅な生活のように思えるんです(笑)。
最後に酒井さんから、これから『シルク』をご覧になる方にメッセージをお願いします。
『シルク』は“運命のめぐり逢い”がテーマになっています。誰にでもあるめぐり逢いの中で、人間はそれぞれの人間関係をどう克服していくのかということを問いかける物語でもありますし、永遠のラブストーリーということで究極的な純愛物語ですので、ぜひ映画館で観ていただけたら嬉しいです。
編集部の呟き
酒井さんの休日の過ごし方は、やはり世界を股にかける多忙な酒井さんだからこその過ごし方だなぁと感じざるを得ませんでした。ホテル暮らしにスーツケース生活…大変じゃないワケがないっ!そんな酒井さんが魂を込めて作り上げた初プロデュース作品『シルク』。ぜひ劇場でご覧ください。
(取材・文・写真:浦川瞳)
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