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| 今回は、映画を作る上でも“大人禁止”でした
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| 『世界の中心で、愛をさけぶ』『春の雪』など、近年は主に原作ものの大ヒットで知られる行定監督。そんな監督の最新作『遠くの空に消えた』は、監督が7年間温めてきた物語を映画化したファンタジーだ。いよいよ8月18日(土)より劇場公開となる本作に込めた想いを語っていただいた。 |
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[行定勲 監督] 1968年、熊本県生まれ。97年、『OPEN HOUSE』で長編劇場映画初監督。第2作『ひまわり』(00)は第5回釜山国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、演出力のある新鋭として期待を集める。『GO』(01)では日本アカデミー監督賞をはじめ数々の映画賞を総なめし、一躍脚光を浴びる。その後『ロックンロールミシン』(02)、『Jam Films/JUSTICE』(03)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)、『北の零年』(04)、『春の雪』(05)などの作品でヒットメーカーの地位を不動のものとする。2006年に先鋭的映像レーベル“グラスホッパー!”とのジョイントベンチャーで企画/プロデュースレーベル“セカンドサイト”を設立。本作はレーベル第一弾の劇場映画企画として、自身が7年間温め続けたオリジナル脚本により作り上げられた。またこの後には、『クローズド・ノート』(9月29日(土)全国東宝系ロードショー)の公開も控えている。
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『遠くの空に消えた』
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
8月18日(土)より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー
オフィシャルサイト |
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| 本作では“信じることが起こす奇跡”が一つの大きなテーマになっていますが、監督ご自身が現在、夢見ていることや信じていることはありますか?
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何かと信じられない世の中ですからね(笑)。でもだからこそ、こういう映画を作ったんですよ。僕自身、ずっと信じていた人に裏切られたり、世の中も信じられないことだらけだから。
僕は熊本に帰ると昔の友達に会って昔ばなしで盛り上がるんだけど、とりあえず昔の話をしていれば盛り上がっていられるというか、信じられると思うんですよね。日常でも未来のことを話すことは少ないし、話しても具体的な未来しか会話しないですし。
でも、子供時代ってそうじゃなかったんですよね。子供って昔ばなしをするほど生きているわけじゃないから、現在か未来のことしか話さないわけです。
僕も年をとって、大概の映画を観ても感動しなくなったし、純粋に受け入れなくなったんですよね。だから、この映画は何と言われようが、作りたいものを作ろうと思って作ったんですよ。
僕が信じているのは、本当に信用できる人たちの言葉です。そういう人たちの言葉に影響されて日々映画を作ってますね。僕自身、この映画がこういう風に完成するということは想像していなかったんですよ。それは、取り巻いている社会や僕に助言してくれるスタッフが、去年作ったらこうだったということなんです。同じ台本でも、7年前に作っていたら、もっと小さい地方都市の、身につまされるような話になっていたかもしれない。周りの人が真剣に助言してくれた言葉だけが信じられることなんですよね。
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| 本作には監督ご自身の子供時代のパーツが散りばめられているように感じられたのですが、どういった経緯であのような世界観になったのですか?
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最初は“ホラ話”を作りたいと思っていたんです。嘘か本当かわからない話にしたかったんですよね。僕は子供のときに寺山修二の映画を観てびっくりしたわけです。話はよくわからないんだけど、印象だけはやたらと強く残っていて、2時間半くらいあって長いんだけど、すごく面白い。
それと、7年くらい前にこの映画の草案を書いたとき、ガルシア・マルケスにハマっていたんです。でも実際に南米に行ってみたら、マルケスの書いていた南米はなかった。実際は、殺伐としていて、もっと現実的だったんですね(笑)。じゃあ、なぜマルケスは幻想文学を書き続けたかということになってくるんですよ。
僕自身、自分の作った映画が社会的にヒットしたりして、映画を作っていて現実的になってしまったところがあってね。もっとフレた映画を作ってもいいんじゃないかと思うようになったんですね。 |
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| 主演の神木隆之介さん、大後寿々花さん、ささの友間さんの起用についてお聞かせください。 |
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この映画は、この時代に神木と大後がいるということで動いた部分が大きいんですよ。7年前にこの映画をやろうと思ったときは、子役を探す段になって戸惑ったんですね。エンターテイメントにしないと客は観てくれないだろうし、でもそれを伝えられる子供って当時はいなかったんですよ。7年前に企画自体を見送ったのはそういう理由だったんです。実際、脚本も出来ていたし、今よりは予算も少なかったけど資金の見通しもついていましたからね。
神木とはアカデミー賞のときに会って、そのとき彼がちょうど声変わりしはじめていた時期だったんですよ。これは今年中に撮らないとヤバいなと思ったんです。声がちょうどひっくり返るんだね。あの声がいいなと思ったのが最初でしたね。
寿々花とは『北の零年』のときに、もう一度組みたいと思ってました。彼女自身、ロブ・マーシャル監督の『SAYURI』に出てから意識もすごく高まっていたし。
ささの友間は無理矢理オーディションに呼んだんです。本人は映画なんかやってる場合じゃないって感じだったんですけど、とにかく会いたいからって無理に呼んで。会ってみたらすごくよかったんですよ。ハックルベリーみたいな子でね。日本映画史上、一番素晴らしい走りをみせてくれたと思います(笑)。この映画は子供から大人へと成長しつつある時期にあれだけ才能のある3人がいたということに尽きますね。
Q:監督から要望されたことはありましたか?
要望というのは特にはありませんでした。子役扱いはしませんでしたし、普通の撮影のようにやってましたね。感情面でも、こちらが伝えたいと思っていることは台本を読む時点で彼らも理解していましたから、そこが才能ですよね。でも、彼らの子供らしさに逆に救われる毎日でもありましたね。 |
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| 7年前にこの映画の脚本を書かれたとき、子供たちの通過儀礼的世界を描くにあたって何を引用されましたか? |
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特に引用したものはなくて、むしろ僕の子供時代のことに尽きますね。一番描きたかったのは赤星君という男の子で、映画では大人という設定ですけど、実際、僕が子供時代をすごした熊本に赤星君という子がいたんです。いつも僕らが野球やってると、僕らの後ろでずっとバット振ってるんですよ、自分も仲間に入れろと言わんばかりにね。「代打赤星!」って声がかかるとすごく嬉しそうに代打に立つんだけど、もちろん三振してしまう。外野を守れば、草むらの中をずっとボールを探して、皆がいなくなっても暗くなるまでずっと探しているんですよ。学校が終わって友だちのところで遊んで家へ帰ろうと自転車で公園を通ると、まだ探してるんです。
僕がこの映画をやろうと思った一番の理由は、そのときの僕の感情なんですね。あのとき僕はものすごく残酷だと思ったんです。赤星君には多分、知的障害があったんですけど、ボールをずっと探してる彼に感動させれらたこともあったわけですね。でも、今の社会は、大概そういうものを隠しているんですよね。ここまではOKというボーダーラインを常に引いていて、ギリギリまでは遊ぶんだけどそこを飛び越えたりはしないという。そういうところが今の映画界にも言えることだったんで、この映画を作ったのはそれが全てですね。
僕の子供時代には周りにとんでもないオヤジが大勢いて、今思い出すと大人気ないなって思う反面、じゃあ誰が大人なんだろうという気持ちもあるんです。
例えば、映画を作っていても、すごく“大人”な人っているんですよ。「なんで睡眠時間がないんだ」とか「メシ入れろ」とか(笑)、「やってられないよ」とか言ったりする人たちですけど。僕はそういう人たちが大っ嫌いなんですよね。映画って、面白いものを観客に伝えたくて、寝る間も惜しんでやってるわけです。そういう中で“大人”な人がいると、そういう人こそ排除したくなるんですよ。だから今回は、映画を作る上でも“大人禁止”でしたね。実際、衣裳をお願いした伊藤佐智子さんというベテランの衣裳デザイナーの方や、一番年上の美術の山口修さんが、現場でも一番“子供”だったんですよ。色んなアイディアを出してきてね。還暦を迎えたオヤジなんですけど(笑)。
肥溜めに落ちるシーンなんかも最初はなかったんです。でも、スタッフの中には子供時代に肥溜めに落ちたことのあるオッサンたちが大勢いて(笑)、「よく肥溜め落ちたよね」って盛り上がっていたんです。そういう中から生まれたシーンなんですよ。若いスタッフが作ったりしたら「肥溜めはこんなんじゃない!」とかいってダメ出ししてね(笑)。そういう現場の面白さが伝わってこその映画だと思うんですよね。よくあるデートムービーみたいに時間潰し的な映画を作ってしまうのが、僕自身ヤバイなと思っていたから。子供時代って楽しかったよねって、そこを感じてもらえればいいなと思って作った映画なんです。
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一つの質問に対する答えの長さを見ての通り、とにかくじっくりと語ってくださった行定監督。本作にかける並々ならぬ想いと情熱が伝わってきた。お話をうかがっていて感じたのは、監督が今の映画界や映画作りのあり方に危機意識を持っているということ。本作は監督による完全オリジナルストーリーだが、数々の大作を手がけてきたヒットメーカーである監督だからこそ、原点に帰ってこういう映画を作りたくなったのかもしれないなと、そんなことを感じたインタビューだった。
(取材・文・写真:山内真理子)
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