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インタビュー
『逃亡くそたわけ―21才の夏』吉沢悠 単独インタビュー
『逃亡くそたわけ―21才の夏』吉沢悠 単独インタビュー
僕だったら花ちゃんみたいな人とは一緒にいないと思いますね(笑)
芥川賞作家、絲山秋子が05年に発表した同名小説を基に、現代日本に急増している“心の病”を明るく爽快に描いた真夏の<ROCK>な青春ロードムービー。この作品で、“うつ病患者のなごやん”を演じた主演の吉沢悠さんに、お忙しいスケジュールの合間を縫って、撮影秘話などたっぷり伺った。
profile
[吉沢悠]
1978年東京生まれ。98年に、TBS系ドラマ『青の時代』でデビューし、以降、TVドラマを中心に、映画、CM、ラジオなど幅広く活躍。03年、竹内結子共演の『星に願いを。』で視覚障害者の役に挑戦、評価を確実なものにする。その後、2本の映画に出演した後、05年4月、芸能活動を休止しアメリカへ。翌06年、名前を本名の読み“よしざわひさし”に戻して活動を再開した。主な出演作に、宮部みゆきのベストセラーを映画化した『クロスファイア』、『着信アリ2』『夕凪の街 桜の国』などがある。
『逃亡くそたわけ―21才の夏』
配給:シネハウス
10月20日より渋谷Q-AX シネマほか全国にて公開
オフィシャルサイト
まず、脚本を読んで最初の印象はいかがでしたか?
脚本がくる前に、原作を読んでいたんです。原作があるものは自分なりに世界観を感じたいので目を通しているんですよ。その時は、普通の生活をしている人には感じられないような世界を感じましたね。ファンタジー的というか…。

それから脚本を読んだんですが、原作よりもテンポがあがっていると思いました。原作を映画化する場合、両者の間にはどこかしらそういう違いがあった方が、やる意味があるというか、おもしろいと思っているので、どう仕上がるかとても楽しみでしたね。
吉沢さん演じる“なごやん”はうつ病という設定でしたが、役作りは大変でしたか?
そうですね、インする前は色々調べました。実際に病院には行けなかったので、自分なりにネットなどで調べて、ちょうどうつの患者さんが、精神病院での日記をブログに書かれていたのを見つけたので、それを参考にさせてもらったり…。

でも基本的に花ちゃんとのやりとりを重視していたので、病気の部分はそんなにひっぱられすぎないようにしていましたね。
なごやんをとても自然に演じられているように思ったんですが、割と素だったんですか?
素じゃないですよ(笑)。ただ、カメラが回っていない時も、常になごやんぽい位置にいようとはしていたんで、素ではないけど、気づいたら現場でもなごやんキャラでいられたとは思います。それが作品の中にもうまく反映できたんじゃないかな。

Q:ちなみになごやんと一番違うところはどこだと思いますか?

僕だったら花ちゃんみたいな人とは一緒にいないと思いますね(笑)。大変でしょう、だって(笑)。
それでは、そんな花ちゃんを演じた美波さんとの共演についてお聞かせください。
美波ちゃんがどういう芝居をされるのか、前知識が全くなかったんですが、感情をすごく表に出してくる女優さんで、ストレートなので、こちらも気持ちよく演技ができました。キャッチボールしやすかったですね。若いですけど、年齢を感じさせないような強さをもっている女優さんだと思います。

Q:お二人の演技にはアドリブもけっこうあったんですか?

アドリブというか、とにかく彼女がどういう演技をしてくるか全くわからなかったので、柔軟に対応できるようにはしていましたね。

台本を読んで、相手が大体こういう感じでくるだろう…って予想するじゃないですか。それと180度違う返しをされることもありましたからね(笑)。「え?なんでここでそんな間をとるの!?」みたいな(笑)。だから常に柔軟に、美波ちゃんとのやりとりを楽しもうかなと。まあ日常生活の中では、人と人とのやりとりは予想がつかないものですし。
『逃亡くそたわけ―21才の夏』吉沢悠 単独インタビュー
撮影中はハプニングが多かったそうですが、例えばどんなハプニングがあったんですか?
一番大きかったのは台風ですね。九州をちょうど直撃した時だったんです。大分だったかな?福岡を出てちょっとしたくらいで台風に見舞われて、でもまあ撮らなきゃいけないんで、撮れるところだけ撮って、本当だったらそのまま移動しなければいけなかったんですが、ロケバスが揺れちゃって、横転しちゃまずいということで、ちょっと待機したんですよ。で、そろそろ大丈夫だろうということで移動したんですけど、もう道路はすごいことになっていて、木が倒れてたり、ものはころころ転がってるしで、本当に嵐の跡という感じでした。そんな道を通って移動したんですが、なんかあとから聞いたら、台風のときにその道を通ってはいけなかったらしかったんです(笑)。まあ一応安全を確認した上での出発だったんですけど、「普通は通らないよ」って言われました(笑)。

あと宮崎で気絶しましたね。


Q:え!?なんでですか?

やー、過酷だったんですよ、スケジュールが。あとなごやんのテンションを保ちすぎちゃって…。映画の中で、それまで山道とか自然の中にいたのが急に都会に出る、っていうパートがあるんですけど、実際も同じで、それまで山の中で寝泊りして撮影していたのが、その日は久しぶりにホテル泊だったんです。で、空き時間にちょっとベッドで横になろうと思って寝たら、そのまま気絶しちゃって(笑)。意識は戻っても目があかないんですよ!でも撮影の時間だし起きなきゃ!って思うんですけど、全然体が言うことを聞かなくて、頭もぼーっとしちゃって…。

Q:それでどうしたんですか?

なんとか起きましたけど、心ここにあらずでしたね(笑)。でもその時撮ったシーンはOKだったんですよ。ちょうどそんな感じのシーンだったんで…。
それはそれは…(笑)。でもハプニング続きの現場だったようですが、できあがった作品は見所満載ですよね。中でも特に好きなシーンはありますか?
ええ。ほんと他愛のないシーンなんですが、二人で薩摩富士に着いて、花ちゃんが運転していた車をがっと停めたあと、車のカギをポンってなごやんに渡すんですよ。それまでは、車のカギはいつも花ちゃんが持っているのがルールだったのに。それが、なごやんにカギを預けてくれたっていうことは、なごやんと花ちゃんとの信頼関係が完全にできあがっていることを示していて、だからあのカギのやりとりのシーンがすごい好きです。
吉沢さん的には、花ちゃんとなごやんはその後どうなると思いますか?
撮影をしている間は、二人は病院に戻って、なごやんは退院するけど、多分いつか自殺するんじゃないかと思っていたんです。やっぱり世の中いやなことが多いし、病気は治らないし、結局生きていてもしょうがないって思うんじゃないかって…。

でも最後のシーンを撮った後、二人がそのあとバラバラになるのか一緒にいるのかはわからないですけど、また気持ちが落ちる日もあっても、あの旅を思い出してがんばれるんじゃないかって思いましたね。それぞれの道を見つけられるんじゃないかって。


Q:なんで考えが変わったんですか?

それは最後のシーンを撮ったからですね。それくらいあの阿蘇山のシーンは圧倒的でした。 それまでは、ようやくなにか乗り越えてもまた悪いことがあって…っていう繰り返しだった二人でしたけど、でも最後のシーンで、悪いことがあっても次に良いことがある、って逆転しちゃったんです。
それでは最後に、この映画をご覧になる皆さんに一言お願いします。
とにかく、ほとんど花ちゃんとなごやんの二人芝居なので、でこぼこだけどひとつな二人のやりとりを楽しんでもらえたらと思います。 病気でなくても人は落ち込むことはあると思うから、この作品を観て、みんな誰かに頼ったり、生かされているということを感じてもらえたら嬉しいですね。
編集部の呟き
現在出演中のTVドラマ「働きマン」に加え、11月からは主演舞台「ハンブン東京」(作・演出:内村光良)が待機中。「20代最後の1年は、あまり頭で考えずに吸収できるところは吸収して、30代につなげたい」との言葉どおり、相当多忙を極めていらっしゃいますが、その分、今後の活躍がとても楽しみですね。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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