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インタビュー
『ベクシル−2077日本鎖国−』曽利文彦監督 インタビュー
『ベクシル−2077日本鎖国−』曽利文彦監督 インタビュー
この作品はアニメですが、自分としては実写と同じ演出論を用いて撮ったつもりです
8月1日に開かれたロカルノ国際映画祭でオープニング作品として上映され、大きな注目を浴びたばかりの『ベクシル−2077日本鎖国−』。大ヒット映画『ピンポン』で、新たな映像表現を提示した曽利文彦監督が、今度はハイテク技術を駆使して鎖国を強行した未来の日本の姿をヴィジュアル化。また、世界中のトップアーティストがオリジナル楽曲を提供するなど、世界中の才能から認められ、全世界75カ国での公開がすでに決定している本作。何故今ベクシルに才能が集まってくるのか?世界でもトップクラスの知識と能力を持つといわれる映像クリエーターである曽利監督に、“3Dライブアニメ”という最先端の映像表現を用いた最新作についてお話を伺った。
profile
[曽利文彦]
1964年生まれ。大阪出身。映画、TVのVFXスーパーバイザーとして活躍中。96年、ジェームズ・キャメロン創設のデジタルドメイン社に参加し、『タイタニック』のCGアニメーターとして参加。02年、斬新な映像が話題を呼んで大ヒットとなった『ピンポン』で監督デビュー。
『ベクシル−2077日本鎖国−』
配給:松竹
8月18日(土)、全国ロードショー
オフィシャルサイト
まず、この物語を作るに至った経緯を教えてください。
04年に『APPLESEED アップルシード』をプロデュースしたんですが、次はオリジナル作品を監督したいと思っていて、その頃から構想はスタートしました。オリジナルということもあり、自分自身が日頃特に感じていることをかたちにできたらという思いが大きかったですね。

現代社会はメールや携帯などテクノロジーがサポートし、コミュニケーションが多いようでいて、相手と直接対話をする機会が少なくなっている時代です。そのあたりの不安や問題をテーマにした作品を作りたいと思ったんです。

個人間のコミュニケーションの不足、情報だけでつながる個人と個人の社会―。情報が遮断された時に個人が見えなくなる恐怖を感じ、それが鎖国というイメージへ広がっていきました。
驚異的な映像と斬新なストーリーにびっくりしたのですが、前作の『APPLESEED アップルシード』と比較して、ご自身ではどうお感じですか?
前作はCGで映画をつくるというのが目的でもありました。そのため、金属やメカなどCGが得意とする硬質なものの描写が頻出していたと思います。今回はCGが苦手とするものを敢えて取り入れようと試みました。

柔らかいものをいかにリアルに表現するか、それは例えば布であったり煙であったり、砂埃や雪などですね。また、キャラクターの見た目や動きといった外見はもちろん、気持ちなど内面の表現力も実写と同じように描くことを目指しました。
特に現代の若者にとっては、CGの方が見慣れている気がします。監督にとって、CGに対するこだわりはどのあたりにあるのでしょう?
 
私は実写もやるので、CGだけでなく実写にも興味や意欲は抱いています。『ベクシル−2077日本鎖国−』に関して言えば、自分の中ではアニメというよりも実写と同じ意識で撮りました。なぜCGにしたかといえば、このレベルの作品を実写化することは日本ではまだ難しいからです。

これはすばらしいことで、というのもつまり、今までの日本映画では実写化できないスケールの映画は諦めざるを得なかったけれど、それがCGを使って実写の演出論のまま映像化できる時代になったということですから。
『ベクシル−2077日本鎖国−』曽利文彦監督 インタビュー
今回、日本を舞台にしていますが、架空の国や外国ではなく、敢えて日本にした理由とはなんだったのでしょう?
『ベクシル−2077日本鎖国−』は最初からインターナショナルコンテンツを目指していたので、世界中の人たちに観てもらいたいという意識がありました。だから敢えて日本を舞台にしたのです。逆にもし日本だけをマーケットとして考えていたら、日本を舞台にすることにこだわらなかったと思います。
前作も本作も音楽がとても効果的に使われていますが、特に本作ではアンダーワールドやエイジアン・ダブ・ファンデーションなど、世界のエレクトロニックやダンスミュージックの大御所たちが、この作品のために書き下ろしたり、レアな曲を提供しています。特に音楽に対してこだわりをもっていらっしゃるのですか?
日本の映画に使われている映画音楽は、ひとつひとつはすばらしくても、パッケージとしてのサントラとしての形にまでこだわったものがあまりない気がして、もったいないと思っていました。なので、映画の世界を現すためだけに存在する音楽、そしてアルバムとしても魅力的な1枚になるようなものを作りたかったんです。
“ベクシル”という名前にはなにか由来があるのですか?また、この映画を作る中でもっとも苦労したことはなんでしたか?
“ベクシル”はフランス語なんですが、「小さな羽根」「隠し羽」「羽盤」という意味がもともとあるらしいんです。あと大昔、闘うときに掲げた軍旗を“ベクシル”と呼んでいたとも聞いています。ドラクロアの有名な絵にある闘う女神像、ジャンヌ・ダルクなど、旗を掲げて闘う女性という意味合いをこめて名づけました。 苦労したことは、そうですね…作品ができあがるまで約2年半かかったのですが、その間、40名近いクリエイタースタッフ全員のモチベーションをずっと一定のレベルに保ち続けることが大変でしたね。
『ベクシル−2077日本鎖国−』は2077年を舞台にしていますが、70年後の日本は、テクノロジーという面でどこまで進んでいると思われますか?
『ベクシル−2077日本鎖国−』は、2067年からスタートしています。67年に日本が鎖国に入り、10年後の77年が舞台となっているんです。この時代設定は、自分が生きてもあと60年くらいだと思っているので、そこから先が自分にとってのSFだと思い、67年をスタートにしました。

ベクシルで描いた世界は、けっこう現実的だと思っているんですよ。アンドロイドがどれくらい進化するかということは別にしても、世界情勢やその周辺の細かいところはけっこう有り得る範囲ではないかと…。個人的にはテクノロジーはそれほど進まないんじゃないかと思いますね。それよりも、これからの人類は寿命をいじり始める気がします。
ベクシルの声を演じている黒木メイサさんら、声優陣もとても豪華ですが、起用のポイントは?
各キャラクターがもつイメージ、それはルックスはもちろん、放っているオーラがなるべく同じ人をキャスティングすることにこだわりました。そういう意味で、まだ初々しさが残っていて、若く向こう見ずでまっすぐ突っ走るベクシルに、黒木さんはピッタリだと思ったんです。

松雪さんはキャリアと成功を重ね、今や非常に味のある女優さんでいらっしゃいます。そういう方にマリアを演じていただきたかったですね。 二人の女性の間で揺れるレオン役の谷原さんも、もちろんピッタリでした(笑)。外見は男らしく逞しいですが、男がもつ内面の弱さというか、その辺りの複雑な面を演じていただくには、谷原さんしかいないですから(笑)。 自分としては、こんなにすばらしいキャストの皆さんがよく揃ってくださったと感謝しています。
作品の中でも特にすごい迫力を見せていたモンスター、“ジャグ”のアイディアはどこから湧いたのですか?
最初はクジラのようなものを描きたいというのがあって、というのも、クジラは体が大きいが故に、見え方によって非常に切ない部分を背負っているように思うんです。人間とサイズが違うために、すごく幸せそうにみえる瞬間もあれば、淋しそうにみえる瞬間もある。そういう象徴としてジャグを描きたかったですね。 私としては、ジャグは捨てられたものが寄せ集まった存在であり、外見の恐ろしさ、醜さと逆に、実はとても悲しい存在だと思っています。
最後に観客の皆さんに一言お願いします。
『ベクシル−2077日本鎖国−』はCGアニメではありますが、私としては実写の理論と同じように作った作品です。アニメ好きな方はもちろん、映画好きな方なら男性でも女性でもどなたでも楽しんでいただけると思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください。
編集部の呟き
インタビューのために一足早くこの作品を観させていただいたのですが、とにかく凄いの一言!最初から最後まで、まるでジェットコースターに乗っているような大迫力なんです。皆さんにもぜひ劇場のスクリーンでご覧になることをお勧めします。ちなみに曽利監督の次回作は、女座頭市を描いた『ICHI』。綾瀬はるかさん主演のこの作品も楽しみです。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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