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インタビュー
『ユゴ〜大統領有故〜』イム・サンス監督 インタビュー
『ユゴ〜大統領有故〜』イム・サンス監督 インタビュー
『朴正煕はもっとひどく描かれるべきだ!描き方が甘い!!』と怒られましたよ(笑)
現職大統領暗殺という、韓国現代史における最もショッキングな事件を扱った『ユゴ〜大統領有故〜』。韓国では公開直前に朴元大統領の遺族が上映禁止を裁判所に訴え、現在も係争中であるこの作品が、完成から3年の歳月を経て、ようやく日本で公開される。そのプロモーションを兼ねて来日した監督に、この作品に懸けた思いや裏話を伺った。
profile
[イム・サンス監督]
1962年生まれ。延世大学社会学科卒業後、韓国映画アカデミー5期卒業。98年、デビュー作『ディナーの後に』では女性の性的欲望をストレートに描き、儒教色が色濃く残る韓国社会に大きな衝撃を与えた。その後も次々と問題作を生み出し、3作目『浮気な家族』でもその反骨精神は衰えることなく、ベネチア映画祭をはじめ、海外映画祭で高い評価を受けている。本作品はカンヌ国際映画祭監督週間に出品、現在はフランスで新作を撮影中である。
『ユゴ〜大統領有故〜』
配給:エスピーオー
2007年12月15日(土)よりシネマート六本木ほか全国にて順次公開
オフィシャルサイト
朴正熙大統領(当時)の暗殺事件を描くということで、撮影前からなんらかの訴訟や物議を醸すことは予想しておられたそうですが、それでも敢えてこの作品を撮ろうと思った理由はなんだったのでしょう。
イム監督:僕だけでなく製作側も、訴えられることは実はそんなに気にしていなかったんです。というのも、もし訴えられても、逆にそれによって作品が注目され、興行的にあたるものですから(笑)。

シムプロデューサー:ただそうは言ってもひとつ心配だったのは、途中でもし何らかの圧力をかけられ、撮影が中断を余儀なくされることでした。幸いそんな出来事もなく、楽しく撮影できたからよかったですが。ただご存知のように、一部上映禁止を裁判所の判決で言い渡され、その部分を黒く塗り潰さなければならなりました。
史実に基づいた血なまぐさい事件を描きながら、どこかユーモラスで、バイオレンスシーンも見ごたえがあり、高いエンターテインメント性を感じたのも事実です。そこらへんは監督の中でも意識されていたんですか?
イム監督:ひとつの映画はいくつもの層からできていると思います。映画を観る際、その層を一枚一枚はがして中身まで観て頂きたいとも思いますが、表面だけでいいとも思うのです。

僕はこの作品をアクション映画のつもりで撮りました。バイオレンスやアクションにおいては、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』を意識しましたね。あの映画の銃撃シーンはとてもオリジナリティに溢れ、かつ非常に暴力的に描かれています。この映画もそれに負けないよう、残忍なところはできるだけ暴力性を強調して描こうと思ったんですが、その点については半分くらいの満足度でしょうか(笑)。


――たったの半分ですか!?(笑)

イム監督:ええ、もっとうまく撮れたのに、と残念なシーンがあるんです。でもそれがどこかは僕だけの秘密です。隣に座っているプロデューサーも知りません(笑)。
監督は以前、光州事件を題材にした作品もつくっておられますし、タブーを描くことに挑戦されたのは今回が初めてではありませんが、民主化されて久しい現在の韓国で、なぜ朴元大統領の暗殺や、それ以外にも大統領の不正を扱うのがタブー視されているのでしょうか?
イム監督:とてもシリアスな質問ですね(笑)。朴大統領が暗殺された後も、彼の政治スタイルはしばらく残っており、結局彼の政権時代から30年近く、朴体制が続いたのが事実です。そして、朴元大統領と当時手を組んでいた人たちの勢力は今も残っているんです。彼らは財閥を築き、マスコミでも巨大な力をもっています。そういう人たちがいる限り、我々表現者にとっては、この手のことは簡単に扱えない題材だということが想像していただけると思います。

タブーは世界中にあると思いますが、それを守る人と打ち破る人が必ずいて、私は当然後者の立場です。今回私は、大統領の頭に銃弾を打ち込むというタブー中のタブーを描きましたから、今後、それ以外のタブーが打ち破られたらと願っています。
 
削除されたシーンに、監督の朴元大統領への評価が一番現われていたと思いましたが、現在の韓国で、朴元大統領への評価はどのようなものがあるのですか?
イム監督:彼に対する評価は様々ですよ。批判する人もいれば、崇拝している人もいます。評価は人それぞれなので一概に良い悪いとは言えないですが、少なくとも評価するにあたって、その人がどういう人物でどういうことをしてきたのか、その事実をきちんと知る必要があると思います。

朴元大統領については、そういう段階をきちんと踏まず、ただ印象やなんとなくで評価を下していることが、僕は問題だと思っています。だからこの映画を観て、彼がどんな人間でどのように死んだのかを知ってもらいたかったんです。
『ユゴ〜大統領有故〜』イム・サンス監督 インタビュー
この作品の韓国での受け止められ方は、朴政権を知っている世代と知らない世代でかなり違ったと思いますが…?
イム監督:おっしゃるとおりです。世代によって見事に反応が違いました。あと、資産や政治的立場によっても反応は異なりましたね。

まるで自分の姿を見せつけられているように感じた人は、当然のことながら作品のみならず私のことも強く批判しました。一方、朴政権時代を全く知らない若者の中には、どこまでが事実なのか疑問と興味をもち、当時の資料を読み始めた人も少なくなかったようです。それを聞いた時は、とても嬉しかったですね。

そうそう、かつて民主化運動や進歩的な運動をしていた人たちからは、「朴正煕はもっとひどく描かれるべきだ!描き方が甘い!!」と怒られましたよ(笑)。
朴正煕暗殺事件を映画化するにあたり、当時の記録を読み漁ったそうですが、それらの資料は簡単に閲覧できるものなのですか?
イム監督:ええ、公開された資料だったので、手に入れるのは難しくなかったです。私は事件当時十代でしたが、当時から興味をもっていたので、事件に関する報道や記事はほとんど全て読んでいましたから、今回も敢えて調べなくてもいいくらい既に充分知識はもっている状態でした。

ただシナリオを書くために、もう一度念のため資料を読み直したんです。普通そういう作業をしていると、予期せぬ新情報が出てくるものですしね。でも今回ばかりは新しい情報は苛立つほど出てきませんでした。だからつらい作業でしたよ。
映画の中で日本語を話したり日本の歌を歌うシーンがけっこう出てきますが、あれは当時の状況を忠実に再現しているんですか?
イム監督:ええ、あの世代ではごく普通のことでした。朴大統領は演歌が大好きでしたし、60年代に日本を公式訪問した際、日本語をしゃべったことが大きな問題になったりもしました。この映画では、彼がどれほど親日派だったかを象徴的に表そうと思ったのも、日本語を入れた理由の一つです。
大統領の遺族から名誉毀損で訴えられていますが、逆に、首謀者である金載圭など、実行犯の遺族からは何も言われなかったのですか?
イム監督:ハン・ソッキュが演じた鄭昇和の弟さんが、この映画を観て「兄はあんな風に罵倒の言葉を発するような人間ではない!」と怒ったという報道がありました。実はハンからも、あの人物設計はどうかと言われたんですが(笑)、僕はどうしてもああいう人間として描きたかったんです。それに関しては申し訳ないという気持ちがありますね。

シムプロデューサー:監督であれ作家であれ、表現者の中に、意図的に特定の人物の人格を傷つけようとする者はいないと思います。僕たちももちろんそうです。この映画を作るにあたり、登場人物の誰かを意図的に悪く描こうとか、歪めて描くことは思ってもいません。監督は客観的に描こうと努力していたと思います。ただそれでも誰かに不愉快な思いをさせたのであれば、心から謝罪したいし、すべきだと思います。
編集部の呟き
プロデューサーと一緒に現われた監督は、とてもおしゃれでびっくり!ちょっと白銀ぽい髪の毛はつんつんたっており、上から下までラフなんだけれどもしっかり決まっていました(特に皮靴がデザイン&色とも個性的で、写真でお見せできないのが残念!)。「政治的、歴史的背景はもちろんあるが、ヤクザ映画として観てもらってもいいし、スリラーとしてとらえてくれてもいいし、とにかく観た人がその人なりに楽しんでくれたら」と語っていた監督。皆さんもぜひ劇場で、この衝撃の事件を目撃してみてはいかがでしょうか。
(取材・文・写真:星野ロカ)
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