[邦画レビュー]
この映画を見るにあたって記憶を掘り起こしてみたが、「料理」をメインテーマにした映画は数あれども「南極での料理」がメインテーマの映画は覚えがなかった。原作は西村淳による同名のほのぼのエッセイ。特に大きな事件も起きないし、派手なアクションもない。だけど面白くて、退屈もしない。「南極料理人」はそんな映画だ。極寒の地・南極へ観測隊員として派遣された8人の男たち。ウイルスさえ生存できないこの厳しい環境において、毎日の食事は彼らにとっての格別の楽しみである。調理担当の西村淳(堺雅人)は、遠く日本に残してきた家族を思いながら、今日も仲間たちのために食事を作り続ける――。
最初に断っておくが、料理をメインテーマにした映画のレビューで「料理が美味しそうです!」と書くのはレビュアーとしてどうかと思うので、本稿ではそれ以外の部分に目を向けて書いていくことにする。
まず面白いなと思ったのは、本作が南極というある種の閉鎖空間を舞台にしているということだ。そこへ派遣された8人の個性豊かな男たち。期限は1年間。……これで殺人事件でも起これば、立派に箱庭ミステリーとして成立しそうな設定である。

