[邦画レビュー]
是枝裕和監督の最新作である「空気人形」は、おそらく視聴者の評価が真っ二つに分かれるであろう問題作だ。感動したという人がいる一方で、その衝撃的なストーリーに不快感を覚える人もいるかもしれない。だが少なくとも、そうやって“何か”を考えさせるきっかけになる作品であることは間違いない。あらすじはこうだ。
古びたアパートで持ち主の秀雄(板尾創路)と暮らしている空気人形(ペ・ドゥナ)。あるとき自我に目覚めた彼女は、メイド服を着て町へと繰り出し、東京で暮らす様々な人と出会う――。
言うまでもないが「空気人形」とはラブドールのことである。生まれたての赤ん坊のような純粋さと、男性の性欲を満たすために存在するという二面性を備えた空気人形は、それ自体が現代人を象徴する存在であり、視聴者は彼女の目線を通して、もう一度現代人――すなわち自分自身――の姿を再確認していくことになる。
途中に登場する“病める現代人たち”の描写についてはやや掘り下げが浅いと感じる部分もあるが、そうかと思えば中盤から後半にかけて吐き気を催すほどの人間の醜さを見せつけられる場面もあったりするので油断できない。一見するとそのしっとりとした雰囲気にだまされそうになるが、本作の本質はかなりダークだ。

