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[特集]

「フローズン・リバー」特集:サンダンス映画祭から放たれる衝撃の人間ドラマ
     2010年1月30日に公開される映画「フローズン・リバー」。監督はコートニー・ハント、主演はメリッサ・レオ。しかしながら、多くの人は彼らの名前を聞いてもピンとこないだろう。それもそのはず、監督は本作が長編デビュー作であるうえインディペンデント映画(自主制作映画)なのだから知らなくて当然。だが、そんな作品がなぜ世界中の視線を集めているのか──それはインディペンデント映画を対象にしたサンダンス映画祭でグランプリを受賞したことにある。そこで、サンダンス映画祭とは一体どんな映画祭なのか、2008年度のグランプリに輝いた「フローズン・リバー」の何がそこまで絶賛されたのかを特集する。(文:新谷里映)   

サンダンス映画祭から放たれる衝撃の人間ドラマ  「フローズン・リバー」女性ペア限定独占試写会レポート

次々と名作が生み出されるサンダンス映画祭を知る

     “映画祭”と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり世界三大映画祭として名を連ねる「カンヌ国際映画祭」「ベルリン国際映画祭」「ベネチア国際映画祭」だろう。また、アメリカのアカデミー賞、ゴールデングローブ賞といったショーレースも世界中から注目を集める映画祭のひとつだ。世間一般的には“世界三大映画祭に公式上映された”“アカデミー賞にノミネートされた”という事実が公開時の宣伝文句になり、われわれ観客にとっても“○○○賞受賞”というラベルの有無が作品選びの基準のひとつになっている。   

  

「フローズン・リバー」を絶賛したタランティーノ自身もサンダンスで注目を浴びた一人

「フローズン・リバー」を絶賛したタランティーノ自身もサンダンスで注目を浴びた一人

  けれど、そういった商業映画ではないインディペンデント映画(自主映画)も数多く作られており、素晴らしい作品もたくさん生まれている。それを見つけ出し世界で公開するチャンスを与えてくれるのがサンダンス映画祭だ。「フローズン・リバー」は2008年度のサンダンス映画祭でグランプリを受賞した作品。当時、審査員長を務めたクエンティン・タランティーノは「今年観た中で最高にエキサイティング。息をのむほどすばらしい!」と最大級の賛辞を贈っている。
  

     また、サンダンス映画祭をきっかけに羽ばたいた作品や人物をたどることで、なぜそれほどまで注目されているのかが見えてくるだろう。たとえば、コーエン兄弟監督作「ブラッド・シンプル」、スティーブン・ソダーバーグ監督の「セックスと嘘とビデオテープ」、クエンティン・タランティーノ監督作「レザボア・ドッグス」など。この映画祭を機に知名度を上げている彼らの現在の活躍をみれば、この映画祭が輩出する才能の高さは明らかだ。   

サンダンスから飛躍した映画監督たち(一部紹介)
 監督 
 作品 
 コーエン兄弟   「ブラッド・シンプル」 
 ジョン・キャメロン・ミッチェル   「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」 
 ジョシュア・マーストン   「そして、ひと粒のひかり」 
 ジェームズ・ワン   「ソウ」 
 アレクサンダー・ロックウェル   「イン・ザ・スープ」 
 カリン・クサマ   「ガールファイト」 
 ブライアン・シンガー   「パブリック・アクセス」 
 トッド・ヘインズ   「ポイズン」 
 クエンティン・タランティーノ   「レザボア・ドッグス」 
 スティーブン・ソダーバーグ   「セックスと嘘とビデオテープ」 
 ロバート・ロドリゲス   「エル・マリアッチ」 

  

若き才能の発掘に力を注ぐロバート・レッドフォード

若き才能の発掘に力を注ぐロバート・レッドフォード

  というわけで、「フローズン・リバー」のコートニー・ハント監督が今後注目を浴びる可能性はきわめて大きい。ちなみに、サンダンス映画祭の名前は、映画の主催者である俳優であり監督であるロバート・レッドフォードが「明日に向かって撃て!」で演じたサンダンス・キッドの役名から付けられている。
  

すべては愛する子供たちのため…母の愛と強さに涙

  

愛する子供のため、大きな賭けに出る2人の母

愛する子供のため、大きな賭けに出る2人の母

  本作には不法移民の密入国という犯罪に手を染めてしまう2人の母親が描かれる。ストーリー的にジャンル分けされるとしたらクライム・サスペンスと言うのが無難かもしれない。けれど、ごく普通の母親たちがある状況から抜け出すために、また生きるために犯罪に手を染める必要があったとしたら……それはクライム・サスペンスではなく、母親たちのアクション・アドベンチャーと言えるだろう。
  

     とは言っても、ものすごいアクションが展開するわけでも、ものすごい秘密が解き明かされるわけではない。生活のためと割り切って犯罪で大金を稼ぐ2人の女の姿が淡々と描かれ、決して起伏の激しいストーリーではないのは事実だ。しかし、子供を愛するがゆえの母の行動という視点からみると、凍った川を車で渡るのはアクションだし、1ドルショップで働く母が密入国の手引きをするのはアドベンチャーにほかならない。その母の強さに衝撃を受けることは間違いないだろう。   

  

危険な状況に遭遇しながらも、立ち向かう強い女性レイ(メリッサ・レオ)

危険な状況に遭遇しながらも、立ち向かう強い女性レイ(メリッサ・レオ)

  ギャンブル依存症の夫に新居購入のために貯めていた大金を持ち逃げされ、残された2人の子どもたちと生きるために必死で働く白人女性のレイ。そして、愛する夫に先立たれ義理の母に赤ん坊を奪われ、子どもと一緒に暮らす日を夢見るモホーク族のライラ。この2人の母親がふとしたきっかけで知り合い、互いの家族(子供)を守るために危険を冒していく姿にハラハラドキドキさせられるのだ。
  

     また、レイとライラのギリギリの経済状況は現在の日本をはじめ、世界不況のあおりを受けているすべての人に通じる。他人事とは思えないはずだ。監督自身も「私が好きなキャラクターは、見た目には必ずしも魅力的ではなく、いつもギリギリの生活をしているような人々」だと語っている。   

  

ギリギリの生活を、家族の団結力で切り抜けようとする姿に心打たれる

ギリギリの生活を、家族の団結力で切り抜けようとする姿に心打たれる

  また、レイとライラのギリギリの経済状況は現在の日本をはじめ、世界不況のあおりを受けているすべての人に通じる。他人事とは思えないはずだ。監督自身も「私が好きなキャラクターは、見た目には必ずしも魅力的ではなく、いつもギリギリの生活をしているような人々」だと語っている。

  そんなギリギリの経済状況のなかでは映画のチケット1枚もシビアになってしまう。派手なハリウッド超大作に比べると、「フローズン・リバー」はとても落ち着きのある作品。どうせなら超大作を……という気持ちもよく分かる。けれど、こんな時代だからこそ“気づき”を与えてくれる「フローズン・リバー」を観てほしい。ラストシーンで描かれるレイとライラの選択──愛に満ちたショッキングなあの瞬間をぜひ味わってほしいのだ。
  


  「フローズン・リバー」予告編
  ⇒「フローズン・リバー」作品情報
  ⇒「フローズン・リバー」コートニ・ハント監督インタビュー


 「フローズン・リバー」
 配給:アステア
 2010年1月30日、シネマライズほか全国順次ロードショー
 オフィシャルサイト