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第14回:「今頃なんで…」なぜ地方は単館系映画の上映が遅れるのか?
10.06 更新
 都会生まれの都会育ちの人には分らないかもしれないが、地方出身で現在都会暮らし、もしくは田舎に住んでいる人なら、絶対に1度は感じたことがあるはずだ。全国公開と銘打ってある映画にも関わらず、どうして地方で上映されるのは公開日から何カ月も先なのか、と。余談になるが、筆者が実家へ帰り、大絶賛上映中と書かれた、熱の冷めきったポスターを目にすると、何を今頃……と、都会との温度差にどこか哀しい気持ちを抱いてしまうのはしょっちゅうである。地方差別だ! と言えなくもない。なぜこのような現象が起こってしまうのか。今回は、特にその現象が顕著な単館系の映画にスポットを当て、地方で上映が遅くなる謎を解明していきたい。
第14回:「今頃なんで…」なぜ地方は単館系映画の上映が遅れるのか?
福井県のみなさんがデ・パルマ監督最新作を観れるのは来年2月
 そもそも、映画を公開する際、配給側が前提として考えるのが、札幌市、東京都、名古屋市、大阪市、福岡市の五大都市で同時期に作品を回したいということ。例えば、1都市1館で公開するとしたら、最低5本のフィルムが必要となる。そして、フィルム1本を焼くのに30〜40万円かかるため、五大都市で同時期公開しようとすると、150万〜200万円が最低限必要な金額となる。「もう少し多く焼いても、映画は儲かるんだからいいでしょ」と思うかもしれない。

 だが、単館系の作品は元々予算が少ないのでスポットをガンガン流せず、同じ金額を払うなら、ハリウッドメジャーや邦画大作に流れてしまう現実を加味すると、正直、ヒットは厳しい状況になってしまうのだ。分かり易く言えば、フィルムを焼けば焼くほど回収は厳しく、最終的に赤字になるのである。となると、配給側はリスク軽減を考え、フィルムをさらに焼こうとはせずに、最初の5本でどうにかしようとする。東京で1カ月公開した後、ちょっと大きめの市がある地方へ、その次に更なる地方へと、田舎になればなるほど、作品の公開が遅くなってしまうのだ。

 例えば、ブライアン・デ・パルマ監督最新作「リダクテッド 真実の価値」は10月25日公開だが、青森や岩手では冬、福井は09年2月28日から、愛媛に至っては来春の公開である。トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」を手掛けた監督の作品であり、同作はヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しているにも関わらず、このような現状なのだ。

 とはいえ、フィルムの少なさだけが公開遅れの原因ではない。単館系の作品をかける劇場が、地方では圧倒的に少ないのも要因の1つなのだ。そして、東京は単館系の映画館が多いため、必然的に単館系の作品が増加してしまう。そうなると、地方の単館系劇場では公開待ち渋滞が起こり、さらに公開が遅くなってしまう。また、シネコンは建設されても、単館系の劇場が新築されることは滅多にないのも、遅延に拍車をかける。予算が少ないことに加え、作品の供給過多と受け入れ体制の問題と、単館系映画の全国同時公開への道は険しいのである。


■過去の記事:
第13回:来日するハリウッドスターは、日本のどこで遊んで何を食べる?
第12回:原題で行くか、意訳するか。洋画の邦題を付ける基準って何?
第11回:最近、テレビドラマにハリウッドスターが出演するのはなぜ?
[映画ウラ事情]
映画業界のウラ側や疑問を、映画ライター・安保有希子が読み解く。(毎週月曜日更新)
映画ライター:安保有希子
映画ライター:安保有希子
1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。
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